「ウエスト・サイド・ストーリー」2022年2月11日(金・祝)全国公開 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン (c) 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

 もっとも一級のエンターテインメントだけでは終わらない。スピルバーグ監督は、「この映画は今日の問題とつながっている」と指摘。「1861年のアメリカ南北戦争以来、これほど大きくこの国が分断されたことはなかった」という。人種の異なるジェッツとシャークスの抗争は、米国人が今日まで悩まされているのと同じ争いや人種差別でもある。

「スピルバーグ監督の『ウエスト・サイド・ストーリー』をすごく楽しみにしている」

 と語ったのは、「『ウエスト・サイド物語』に大きな影響を受けてきた」という俳優のピーター・ディンクレイジ。2月25日公開のミュージカル映画「シラノ」で主演のシラノを演じ、圧倒的な美声を披露する。

「シラノ」2022年2月25日(金)全国公開 配給:東宝東和 (c) 2021 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.

「歌は心を開かないといけない。魂で歌っています。それが必要なことでした。今回、歌自体がとても美しいので、できる限りベストを尽くしたいと思いました」

 男女の三角関係を描いた「シラノ・ド・ベルジュラック」は、1897年にフランスで初演されて以来、世界各国で何度となく映画やミュージカルになってきた。主人公のシラノといえば、大きな鼻を持つ男として描かれるのが定番だ。だが、本作のシラノはそうではない。軟骨発育不全による小人症のディンクレイジが演じることで普遍的な愛の物語を目指した。

 ディンクレイジは言う。

「この作品は、鼻によってシラノのキャラクター自体が定義づけられているところがある。だから、鼻を取り外すことはリスキーではあるのですが、誰もが彼に自然に寄り添える素晴らしいアプローチだと思いました」

 メガホンを取ったジョー・ライト監督もシラノの鼻に抵抗を感じていた一人だ。物語にはティーンエージャーのころから興味があったものの、同じストーリーを違うバージョンで繰り返し作ることには懐疑的だった。それが、ピーターがシラノを演じた舞台版を見たことで、ライト監督の気持ちが変わった。

「それまで見た『シラノ・ド・ベルジュラック』は、ハンサムで背が高い役者が付け鼻をしているという感覚が抜けませんでした。だから、ピーターのバージョンを見たときにハッとしたんです。ピーターはそれまでの経験を役にもたらすことで、力強く表現していた。僕は役に合った役者さんが、ふさわしいタイミングで演じることでクリエーティブな作品が引き出され、映画が成功すると思っています。ピーターの場合がまさにそうでした」

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