
コロナ禍の憂さを吹き飛ばすような大作ミュージカル映画が今月、相次いで公開される。「ウエスト・サイド・ストーリー」と「シラノ」。現代に通じる問題を照らし出しながら、極上エンターテインメントに仕上がっている。ミュージカルが苦手な人も見方が変わるかも──。
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ミュージカルブームといわれて久しい昨今、舞台に限らず映画も続々公開されている。
今、大きな注目を集めているのが、スティーブン・スピルバーグ監督による「ウエスト・サイド・ストーリー」(2月11日公開)だ。
1961年の「ウエスト・サイド物語」はミュージカル映画の金字塔と言われる。スピルバーグ監督はリメイクではなく、「完全に57年の舞台、ブロードウェー・ミュージカルに基づいた映画」という。
いつかミュージカルを作りたい──。子どものころに舞台「ウエスト・サイド物語」を見て以来、魅了され続けてきたスピルバーグ監督。新作には並々ならぬ思いが込められている。
1950年代のニューヨーク・マンハッタンが舞台。社会の分断の中で差別や貧困に直面する若者たちは、グループ同士でいさかいを起こすようになっていた。中でも、プエルトリコ系移民の若者が集う「シャークス」とポーランド系移民の「ジェッツ」との対立は激しさを増すばかり。そんな中、ダンスパーティーに参加したジェッツの元リーダー・トニー(アンセル・エルゴート)は、マリア(レイチェル・ゼグラー)と出会い、恋に落ちる。だが、マリアは敵対するシャークスのリーダーの妹で……。
現代版ロミオとジュリエットといわれる恋愛悲劇。脚本作りからキャスティングをそろえるまで5年かかった。主演の一人、マリアを演じたレイチェル・ゼグラーは約3万人の中から選ばれた。
実際、キャストの実力は映画を見れば明らか。ダンスシーンは見る者の気持ちを高揚させるほど華やかだ。また、耳になじみのあるレナード・バーンスタインとスティーブン・ソンドハイムの楽曲の素晴らしさに改めて気付かされる。