◆近所を散歩して日本一周する

 自治体にスマホ専用アプリを提供する事業者はさまざまある。南伊勢町が選んだのはPKBソリューション(滋賀県野洲市)。同社の健康ポイントアプリは、健診の受診率を上げ、運動の習慣化や歩数増加などの目標設定と評価・改善などにつなげるもの。

 高齢化が進む日本で、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」への対応が急がれている。PKBはこの問題を解決するため、健康ポイントアプリを開発したという。アプリ搭載のスマホを携帯して、犬を連れて近所を散歩するだけでも、バーチャル上で日本一周のどこまで歩いたか、その歩数をはじき出してくれるような仕組みを搭載している。

 南伊勢町の健康アプリも、「海のお散歩コース」や「南伊勢町お花見コース」など、バーチャルウォーキングラリーを5種類用意している。

 こうしたスマホの健康アプリにも課題はある。PKB広報担当者は「健康は食生活も影響してくるので、運動だけで健康にはなれない」という。食事の写真をスマホで撮影し、料理ごとの栄養素などを分析するソフトはある。しかし、味噌汁なら一律に、塩分量がいくらというように、一定の成分が含まれているという分析しかできない。実際の食事に含まれる成分量とかけ離れることも。

 さらに、体重を2カ月前と比較できるが、減量の効果は健康アプリだけでなく、食事などの影響もある。健康アプリのメリットとして、「歩く歩数が増えたとか、外に出かけるようになったという抽象的な効果はある」(PKB広報担当者)。

 また、一部で健康アプリの登録者数が伸び悩んでいる。福岡県では一定のポイントで発行されるクーポンを使える協力店が県内107店にとどまる。「協力店を増やして利用者を増やしたい」(同県担当者)。愛知県も健康アプリの「知名度が低い部分がある。PRして活用していただきたい」(同県担当者)という。

 住んでいる自治体が健康アプリを導入しているかも。歩くだけでポイントがたまり、景品などと交換できれば健康増進と一石二鳥だ。確認してみては。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2022年2月18日号