スノーボードの平野歩夢が金メダルに輝いた。昨夏の東京五輪ではスケートボードでも出場した平野。その強さの理由とは。AERA2022年2月21日号の記事を紹介する。
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平野歩夢(23)の「二刀流」への挑戦は金メダルに結実した。
2月11日の北京五輪スノーボード男子ハーフパイプ決勝。暫定2位で迎えた最終3回目だった。空中で縦3回転、横4回転する超大技トリプルコーク1440を含む最高難度のルーティン(技の構成)を完璧に決めて逆転。スケートボードで出場した東京五輪からわずか半年後、スノーボードで日本勢初の優勝を果たした。
平野歩はいつもの落ち着いた口調でインタビューに答えた。
「いや~、まだ実感があまりないんですけど。ようやく小さいころの夢がひとつかなったなって。今日はずっとやってきたことがすべて出し切れた」
決勝は各選手が3回ずつ滑り、最高得点を競う。1回目、平野歩は冒頭で五輪史上初めてトリプルコーク1440を決めたものの、4番目のトリックの着地に失敗した。2回目はトリプルコーク1440を含む全てのルーティンを成功。だが、点数は91.75点と伸び悩んだ。技の多様性が豊かなスコット・ジェームズ(オーストラリア)に0.75点及ばなかった。
この点数が平野歩のギアを上げた。3回目は2回目と同じルーティンで挑み、冒頭のトリプルコーク1440ではこの日最も高い5.5メートルのエアを披露。続く大技キャブ・ダブルコーク1440(利き足ではない足を軸に縦2回転、横4回転)も高く飛んだ。最終5番目のトリックでは、ボードの後ろ部分を手でつかむ「テールグラブ」を4回転回り切る寸前まで入れた。96.00点。一つ一つの技を極めた結果だ。平野歩は言う。
「2本目の点数は納得いかなかったんですけど、そういう怒りが自分の中でうまく表現できた」
■自分の滑りを貫いた
平野歩を長年取材し続けてきたスノーボードジャーナリストの野上大介さんはこう語る。
「2回目でルーティンを成功させながらもスコッティ(スコット)を超えられなかったとき、普通の選手なら動揺してしまう。でも、歩夢にとっての敵はスコッティではなく自分だった。最終的に自分のやりたい滑りを貫くことしか考えていなかった。それが3回目のランにつながったと思います」