作家・画家の大宮エリーさんの連載「東大ふたり同窓会」。東大卒を隠して生きてきたという大宮さんが、同窓生と語り合い、東大ってなんぼのもんかと考えます。4人目のゲスト、3度の宇宙飛行を経験した野口聡一との対談を振り返ります。
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宇宙飛行士の野口聡一さんとは、野口さんのニッポン放送のラジオで、アシスタントさせていただいて知り合う。そのときは野口さんに宇宙のお話を、当然ながら伺った。が、今回、全く宇宙の話をしなかった。
対談の冒頭、開口一番、「さあ、大宮エリーのオールナイトニッポン、はじまりました」なんておっしゃった野口さん。唖然(あぜん)、からの爆笑。
いろんな国籍の宇宙飛行士がひとつの空間で長い間過ごす。しかも危険と隣り合わせ。そんな中、場を和ませる瞬発力とセンスは大きなみんなの命綱になったのではないか。
「東大で役にたったことありますか?」「ないっすね!(笑)」。こんな会話ができるカジュアルさも。
でも東大が役に立ったことも話してくれた。それはこの連載で伝えたかった神髄で、また舌を巻く。
「自分の学校で、誰も東大受かってなかった。僕、第1号。『開校以来の秀才』と送り出されたけど、来てみたらね、秀才がいっぱいで世間の洗礼を受けた。レベルが違う人を見る。それはやっぱいい経験ですよね」
その後、会社やNASAでも同じ感覚を経験したと教えてくれる。
「会社に入ってみると、うわー、この人この分野で何十年もやってんだ、自分とはもう比較にならないぐらい詳しいってことがいっぱいあるわけでしょ。で、もまれながら、ちょっとずつ上がっていく。NASAに行ったときもやっぱり、エリートのレベルが違う人がいました。MIT(米マサチューセッツ工科大学)で若くしてドクター(博士号)取った人とか、エアフォース(米空軍)のF15に乗ってたみたいな人がいる中で、僕みたいに、日本で受験勉強して普通のサラリーマンしてた経験じゃ、全然太刀打ちできないわけで」
レベルが違うことで、自暴自棄になる人もいるかもしれないけれど、野口さんは、謙虚さと、柔軟さを手に入れ、自由さを身につけた。絶望ではなく、達観。そして何より生きることが楽しそうなのである。それが実は、宇宙レベルで活躍できる素質なんじゃないかと思う。