大宮エリーさん(左)と野口聡一さん(photo 写真映像部・加藤夏子)
大宮エリーさん(左)と野口聡一さん(photo 写真映像部・加藤夏子)

 会社組織での話もしてくれた。エレガントな学問を学んでいても、社会へ出て、いきなり現場、そしてネジを運ぶという単純作業を延々することで腐る時期を経ての、宇宙飛行士応募という人生の転換。腐るということが意外と大事だと確認する。

東大であっても、どんな名門校であっても、大学がやってることは実学とはかけ離れていてね、社会で通用するためには一度つぶされないと」

 へし折られると、何がしたいのかを必死で考え、チャレンジする。だから大学なんて関係ないのだ。学歴よりも机上の空論で生きないこと。

 これを聞いて、日本の政治を思った。普通の人に寄り添えるか。人の上に人をつくらないでいられるか。野口さんはヒエラルキーのない人だった。宇宙から地球を見て、国境が見えないように野口さんの目はニュートラルなんだ。だから3度も宇宙に行って、青い星を見た。

 宇宙飛行士であることを、ものすごいことのように語らない。アメフト部で、合コンにもいって渋谷で遊んでいた“野口くん”という普通さを、まだ大切にしておられた。そこにロマンを感じた。僕らの“野口くん”が宇宙に行った、と。

 昨年から東大で特任教授もしているという。学生たちは、野口さんという宇宙船から、きっと青い地球を見るだろう。それは偏見も差別もない、平和な地球。まだ見ぬそんな地球だと思う。

AERA 2022年8月8日号

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