落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「週刊朝日」。
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週刊朝日さん、創刊100周年おめでとうございます。
あなたとの出会いは私が高1の頃。松本人志さんとナンシー関さんのコラムと山藤先生の似顔絵塾とブラック・アングルが目当てで、放課後に駅前のコンビニで立ち読みしていました。毎週火曜日の20時半にミニストップ。イートインスペースは不良の溜まり場。雑誌棚で数人がヤンジャンやヤンマガを立ち読みしています。そのあいだを掻い潜って、私はあなたを一人読み耽っていました。高校生にも読み易いコラムとはいえ、ちょっと背伸びして週刊誌を手にとる優越感。あなたのせいで「てめえ、邪魔なんだよ! おっさんみたいなの読みやがって!」とカツアゲされそうになったこともありますが、それもいい思い出です。
この連載の依頼が来たのは、私が真打ちに昇進した後、2014年頃でしたか。「なぜ私に?」と当時の編集長と担当者に聞いた覚えはあるのですが、理由は忘れてしまいました。何故ならそのあとの呑み会でヘベレケに酔っ払ってしまったから(編集長も)。「落語家なりの視点で~世の中を~切って頂ければ~」みたいなぼんやりした感じだったような気がします。初めのうちはけっこう気負って臨んでいました。だってあの週刊朝日ですよ。でも3カ月で分かりました。「俺には難しいコトは書けない」と。開始当時はガラケーのメール機能で書いていましたが、2年前からスマホになりました。週1の連載はあっという間に締め切りがきます。原稿を送信するとその日のうちに次のお題が出されて、気がつくとまた締め切り……。連載をしていて驚いたのは、他にも書き仕事の依頼が来たこと。「週刊朝日さんの文章みたいにユルいのをひとつ!」というかんじで一時は週1、月1合わせて4本のコラムを書いていました。世の中にはユル文の需要がそれなりにあるんですね。もっとちゃんとした文を読みたまえ、現代人。でもステイホームのときはそのお陰でなんとか生きながらえました。