去年は8月末に第5波のピークを迎えました。とすると、第6波のピークアウトが見えてきた今、3回目の接種を急いだとしても、夏ごろには予防効果が減少し、夏の流行の際に感染してしまう可能性も考えられます。ブースター接種を積極的に行うのであれば、今後の流行を想定し、接種を進めていく必要もあると思うのですが、そのあたりのことは全く議論されていないようです。
「鎖国状態だ」と国内外から批判されていた外国人の新規入国が原則禁止の水際対策も、3月からようやく段階的に緩和することが発表されました。しかしながら、1日の入国者数は依然として制限されており、観光での入国は認められないため、自由な行き来ができるにはほど遠い緩和策のようです。
国内旅行は良くて、海外旅行はだめ。日本人は入国を認めるが、外国人は入国を制限する。こんな水際対策は、国内でのオミクロン株の感染拡大を含め、コロナが既に国内で流行している今、もはや意味がありません。それでも、なお水際対策を撤廃せず、徐々に緩和すると言っているのですから、私が学生だったら、外国人の入国お断りなんてメッセージを出している日本に行きたいとは決して思わないでしょう。
イギリスでは3月以降、コロナ感染防止を目的に施行されてきた規制を、全て撤廃する見通しであることが先日報じられたばかりですが、日本も、行政主体のコロナ対応から、現場主体、患者さん主体の対応に方向転換していかないと、いつかコロナが落ち着いた時に、取り返しのつかない状況に陥ってしまっていたなんてことになりかねないのではないでしょうか。
山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員