イギリスやイタリア、フランスなど欧州の国々やアメリカでは、オミクロン株の感染が急拡大した昨年末から(始めたのは秋口から)3回目の追加接種を積極的に実施していました。その甲斐あってか、 Our World in Data のデータによると、2月13日時点でイタリアでは人口の60.0%、イギリスでは55.4%、フランスでは51.1%、アメリカでは27.6%が既にブースター接種を終えています。一方の日本のブースター接種率はどうでしょう。2月4日時点で人口の10.3%しかブースター接種を終えておらず、世界平均の15.1%よりも低い接種率です。
南アフリカや欧米を中心にオミクロンの感染が拡大したことを受け、外国人の新規入国停止という厳しい水際対策を実施した一方で、政府は2回目からの接種間隔を原則8カ月とする基準を変えようとしませんでした。2回目の接種から時間が経過するにつれてワクチンによる予防効果が減少していくこと、ブースター接種が先行していたイスラエルやアメリカからブースター接種効果に関する調査結果が報告されているにも関わらず、日本政府はブースター接種を積極的に進めなかったのです。オミクロンの感染拡大をまるで対岸の火事とでも思っているかのようでした。
接種間隔を6カ月にするだの、8カ月のままにするだの、すったもんだしているうちに、オミクロン株が国内であっという間に広がってしまいました。日に日に、症状を訴える患者さんが増えていく様子を目の当たりにした時には「いつ自分が感染してもおかしくない」と何度も覚悟しました。
本来、ワクチン接種は流行前に行うことで、自分を感染から守ると同時に、周囲に感染させないようにするためのものです。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が発表した追加接種に関する報告によると、オミクロン株が主流になった時期での、3回目のワクチン接種を終えた人における入院を防ぐ有効性は、ブースター接種から2か月以内の場合91%であり、4か月以上経過しても78%と高いままでした。ようやくピークアウトが見えてきた頃になって、ワクチン接種を本格化させる始末となったわけですが、昨年の秋にのんびりせず、早くに2回の接種を終えていた高齢者から順番に3回目の接種を行っていれば、ここまで感染拡大せずに済んだ可能性は十分に考えられます。