「今のスープはある程度完成していて、頭打ちになっていきます。ここからは作りをシンプルに“引き算”しながら、別々の寸胴で炊いたスープを合わせる(Wスープ)ことで“かけ算”していきたい。原価の関係もありますが、スープの量もたっぷりにしていきたいですね」(青木さん)
43歳で開業と“遅れてきたルーキー”だった青木さんだが、まだ快進撃は止まらない。理想のラーメンに向かって今一層味を磨いていく。そんな青木さんの愛する一杯は、さいたま市・岩槻で毎日行列を作るパンチの効いた生姜醤油ラーメンだった。
■見よう見まねで作ったラーメンがまさかの大ヒット! 「食べ物はバランスが命」の極意
「Kiriya」と同じ東武アーバンパークライン沿いの東岩槻駅から徒歩5分。新潟のご当地ラーメンである生姜醤油ラーメンをベースとした一杯で連日行列を作る人気店がある。「オランダ軒」だ。
客の多くが注文する「しょうゆチャーシューメン」は丼を覆いつくすチャーシューに、濃いめの生姜醤油スープをたっぷり持ち上げる特製麺を合わせている。見た目からも食欲をそそる一杯に、おなかをすかせた常連客で毎日行列を成す。
店主の山本靖さんは岩槻生まれの岩槻育ち。スノーボードが趣味で、20歳ぐらいからは毎年冬は新潟に籠り、スノボの日々だった。昼はスノボに明け暮れ、夜は焼き肉店でアルバイトをしていた。アルバイト代が入ると必ずラーメンを食べに行っていた。
この頃よく行っていたのが南魚沼市にあった「ヒグマ」という生姜醤油ラーメンの店だった。生姜醤油ラーメンは新潟のご当地ラーメンの一つで、新潟県長岡市発祥の生姜の効いた濃口醤油ラーメンのことだ。
「東京ではまったく食べたことのないラーメンで、カルチャーショックでした。しょっぱいんだけど後を引く不思議な魅力のラーメンですね。まさか後に自分が生姜醤油ラーメンを作る側に回るとは思いませんでしたけど」(山本さん)
30歳でついには新潟に移住し、以前アルバイトしていた焼き肉店で3年間働く。その後、「ヒグマ」塩沢店の店長と仲良くなり、その店長の独立に合わせてラーメン店を手伝うことになった。とはいえ、この時の山本さんの仕事はチャーシューを切る役で、ラーメンの作り方を知るには至らなかった。