今週に入って各地で最高気温が10度台半ばにまで上がり、ようやく春の訪れを肌で感じることができるようになってきましたね。気温が上がると、つい心もウキウキとしてしまいます。
各地から、「春告草」と呼ばれる梅の便りも聞かれるようになってきました。
魚にも、「春告魚」と呼ばれる魚がいます。実は、地域によっていろいろと違いがあるようです。筆者もそうですが、一般的には「メバル」のことを指すと思われている方が多いのではないでしょうか?
メバルは、日本各地の沿岸部の岩礁帯に生息する魚で、水温が9度から20度程度までが適温と言われています。ですので、沿岸部の水温が20度を超える夏場には、沿岸部から離れて水温が低い深みで生活して、水温が低下する11月頃から沿岸部に寄ってきます。
メバルの産卵期は、概ね1月から2月頃と言われていますので、1月から2月頃に産卵のために沿岸部にメバルが集まってきてよく取れるようになったことから、「春告魚」と呼ばれるようになったようです。
メバルは卵胎生の魚で、卵は雌の胎内で孵化し、その後、数千匹の稚魚を一気に海中に放出します。他の卵胎生の魚としては、観賞用の熱帯魚として人気の「グッピー」などがいます。
メバル以外の「春告魚」ですが、ひと昔前までは、「ニシン」が代表的な「春告魚」と呼ばれていました。
以前もこのコーナーで書きましたが、江戸時代から明治時代にかけては、3月になると大量のニシンが産卵のために北海道を中心とした日本海沿岸に押し寄せました。19世紀末の最盛期には、年間で100万トン近い漁獲量があったそうです。現在の日本全体の漁獲量が、年間で約400万トン程度ですので、ニシンだけで100万トンというのがどれだけ凄い量だったのかがわかりますね。
そんなニシンも、1950年代にはほとんど取れなくなってしまいました。今では、ニシンのことを「春告魚」と言っても、ピンとこなくなってしまったということでしょうか。