中西麻耶選手(画像=本人提供)
中西麻耶選手(画像=本人提供)

 そんな中西選手は3月12日に実施されるスポーツ庁委託事業の「 Athlete Career Challenge カンファレンス2022」に、アテネ五輪男子ハンマー投げ金メダリストでスポーツ庁長官の室伏広治氏やラグビー元日本代表の五郎丸歩氏らとともに出演する。

 アスリートがセカンドライフを不安なく迎えるため、引退後に必要なスキルやキャリアを現役時代から学んでおくことの重要性を考えるイベントだという。中西選手はアスリート代表の一人としてトークセッションに登場するが、自身のセカンドキャリアについて思い描く姿はあるのだろうか。

「陸上って狭い世界なんです。基本的には練習して家に帰るの繰り返しで、陸上ばかりやっていたら出会えない人がたくさんいます。だから、自分が引退した時に『明日することがない』という状況にならないように、なるべく社会との関わりを持つようにしています」

 そして、その先には後進の育成も目指す。

「私たちの年代は子どもの頃から楽しみながらスポーツをやらせてもらっていましたが、今は小学生、早ければ2~3歳からのプロ化がすごく進んでいます。だけど本人が楽しんでやっているのか、周りからの期待が大きすぎて逃げ場がないからやっているだけなのか、分からない子も多いんです。私が指導していても、親は張り切っているけど子どもはやる気がなくて……というケースもあって。スポーツそのものを純粋に楽しむ時間も必要だと思うし、(プロを目指すうえで各競技の)専門的なことがまだあまり必要じゃない年代もあると思うんです。幼少期からのプロ化が進む中で薄くなっている部分をもう少し大切にしながら指導して、その後に『はい、どうぞ』と(プロを育成する人に)橋渡しするような取り組みがいつかできたらいいなと思っています」

 義足の開拓者は、これから跳び越えるべき未来を力強いまなざしで見据えている。(三杉武)

◎中西麻耶(なかにし・まや) 1985年、大阪市生まれ。9歳から大分に移り住み、大分・明豊高ではソフトテニスでインターハイ出場。卒業後の2006年に、事故で右ひざから下を切断し、陸上競技に転向。パラリンピックは北京から4大会連続出場。19年のパラ陸上世界選手権走り幅跳びで優勝。20年の日本パラ陸上競技選手権大会の走り幅跳びで優勝し、アジア記録・日本記録を更新。21年の東京2020パラリンピックでは走り幅跳びで5m27で6位に。阪急交通社所属。3月12日開催の「 Athlete Career Challenge カンファレンス2022」(https://passmarket.yahoo.co.jp/event/show/detail/02kg4jqkj0621.html)に出演予定。

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三杉武

三杉武

早稲田大学を卒業後、スポーツ紙の記者を経てフリーに転身し、記者時代に培った独自のネットワークを活かして芸能評論家として活動している。週刊誌やスポーツ紙、ニュースサイト等で芸能ニュースや芸能事象の解説を行っているほか、スクープも手掛ける。「AKB48選抜総選挙」では“論客(=公式評論家)”の一人とて約7年間にわたり総選挙の予想および解説を担当。日本の芸能文化全般を研究する「JAPAN芸能カルチャー研究所」の代表も務める。

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