今シーズンから新任コーチとして就任し、評価を上げている2人がいる。中日の中村紀洋・1軍打撃コーチと楽天の(高井)雄平・2軍打撃コーチだ。2人のコーチとしてのアプローチは異なるがともに“名指導者”になりそうな予感を漂わせている。
中村コーチは独自の指導方法を取り入れ、春季キャンプでも度々話題となった。
「声を出さんほうがヘッドが走ってる。声でごまかすな」(中村コーチ)
2月12日の早出練習で根尾昂に対して声が飛んだ。勝負の年となる4年目の若竜は前日の紅白戦で二塁打を放っていたがスイング時に出す声に注文がついた。
「歯をくいしばらないと、バットは出てこない。声なんて出してる暇はないと僕は思ってる」(中村コーチ)
現役時代のイチロー(マリナーズ他)がインパクトの時に息を吐き出すため声を出していたのは有名。また丸佳浩(巨人)をはじめ練習中からグラウンド中に響き渡るくらいの大声を発する選手も多い。打者がインパクトの際に最大限の力を発揮するためには、声を出して体全体の力を集約することが大事と考えられている。野球界の常識とは逆に思えるが中村にとっては理にかなった方法のようだ。
「中村コーチの指導方法は斬新に見えるが理論的なものが多い。現役時代はフルスイングのイメージが先行していたが柔らかいリストワークで逆方向へ打つのもうまかった。守備が打撃に通じるという考えから試合前に多くのノックを受けていたのも打撃に生きていた。引退後、YouTubeで語る技術論も理にかなっているものばかり。豪快な打撃を支えた高い技術力の伝承に期待が集まります」(在京テレビ局スポーツ担当)
中村コーチは現役時、近鉄の「いてまえ打線」の中心打者として活躍。98年からは5年連続で30本塁打以上を記録し、00年は39本塁打110打点で2冠王にも輝いた。その後もメジャーリーグのドジャースを含む日米6球団でプレーし、NPBでは通算22年間で2101安打、404本塁打、1348打点をマークした球史に残る大打者なのは誰もが知るところ。
「バットを上段に構え足を上げてからのフルスイングは独特な打ち方に見えた。しかし基本はしっかりしており全身の使い方が素晴らしかった。リストの使い方が柔らかくヘッドが鋭く走りバットにボールを当てるのもうまい。下半身が安定しているのでボールを拾う技術もある。伸び悩んでいる打者が1つでも参考にできれば結果も大きく変わるはず」(中日OB)