
■昨年の改定で要保護者
早川:ドーピングは大会運営に混乱をきたします。もしトーナメントだったら、メダルを取り消せば済む話ではなくなる。だからこそ、悪質性の高い物質が検出された選手は無条件に出場できない規定があるのです。暫定的資格停止に関する規定には要保護者に特別な措置をしなさいとは書いていない。もし私が仲裁人だったら、こういう判断はしなかった。
室伏:私は、21年に世界反ドーピング規定が全面改定され、「要保護者」が定義づけられたときから、16歳未満はまさに今回のような事例で処分から逃れられる可能性があると懸念していました。まさかこんなに早くに起きるとは。

■説明してと追及できず
早川:世界反ドーピング規定は6年に1度大幅に改定され、次回見直されると思います。規定にはどうやって体に入ったかの証明は、要保護者は必要ないと書かれているため、ワリエワさんには「説明して」という追及ができません。
室伏:そこが盲点です。本人に説明責任がないのなら、ドクターやコーチ、家族などに追及できると規定に書いておく必要がある。暫定的資格停止にできなければ、いつまでも大会に出られてしまう。「祖父と同じコップを使ったから」という、みんなが信じられないと思うような言い訳が通ってしまいます。
早川:ドーピング行為に加担するのも違反ですから、コーチやドクターに疑いがあるのならば世界反ドーピング機関も調査はします。ワリエワさんからは禁止されていない物質二つも検出されました。私は医学の専門家ではないので聞いた話ですが、トリメタジジンだけを摂取するよりも、大きな効果が出てくる物質です。われわれは「ドーピングカクテル」と呼びますが、ワリエワさんでは配合できない。ドーピングを指導する人や医学薬学の専門家が後ろにいないとおかしい。
(構成/編集部・深澤友紀)
※AERA 2022年3月14日号より抜粋