週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より
週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より

■がんを確実に取りながら、できる限り温存を目指す

 胃がんを手術する際、「開腹」か、ロボット支援を含む「腹腔鏡」か、選択肢は大きく二つに分けられる。恵佑会札幌病院の西田靖仙医師は「がんを確実に取ることを第一に考えて選ぶべきだ」として次のように語る。

「腹腔鏡は傷が小さいという点で、術後の速やかな体力回復が可能です。しかし、開腹でも腹腔鏡でも、がんを取る手術そのものは同じなので、からだへの負担に大きな差はありません」

 腹腔鏡やロボットによる胃切除の治療成績が、開腹手術に劣らないと証明されているのは、現時点ではステージIの胃がんに限られる。上図のチャートはリンパ節転移の可能性があるステージIIIの進行胃がんなので、開腹手術が推奨される。神奈川県立がんセンターの大島貴医師も、「現状では、進行胃がんに対する腹腔鏡手術やロボット手術は、標準治療としてはまだ推奨されていません」と話す。

■残せる胃は残したほうが術後化学療法のプラスに

 胃を残すのか、すべて切除(全摘)するのかについては、両医師とも「少しでも温存することが非常に重要」と同じ見解だ。大島医師が詳しく説明する。

「胃の全摘は食生活に大きく影響するため、15%以上の体重減少が起きることがあります。進行がんは術後に薬物療法がすすめられますが、全摘した人は少しでも胃を残した人に比べ、抗がん剤が十分に使えない傾向があります」

 胃を少しでも多く残しつつ、最初の手術でがんを残さず切除することが重要になる。

「どこをどう切除するのか、がんとリンパ節を取りきれるのかを、術前に医師に確認し、理解したうえで手術に臨んでほしいです」(西田医師)

 術後も、切除した部位を見せてもらい、「この範囲の切除で大丈夫だったのか」などと尋ねてみるとよいという。

「胃がんは根治切除ができなければ必ず再発し、再発後の治療は難しくなります。胃の機能を守りつつ根治を目指せる適切な切除ラインの決定や、確実なリンパ節郭清には、医師に豊富な経験が必要です」

 大島医師はこのように指摘し、手術数の多さは「熟練度」 のひとつの目安になると見ている。

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転移の有無は術後の病理診断で判明する