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 週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』では、全国の病院に対して独自に調査をおこない、病院から得た回答結果をもとに、手術数の多い病院をランキングにして掲載している。また、実際の患者を想定し、その患者がたどる治療選択について、専門の医師に取材してどのような基準で判断をしていくのか解説記事を掲載している。ここでは、「胃がん手術」の解説を紹介する。

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 2020年の胃がん死亡者数は約4.2万人で、近年減少傾向にあるものの、新たに胃がんと診断された人の数は年間約12.6万人(2018年)で大腸がんに次いで2番目に多い。男女別では男性に多く、女性の約2倍である。

 胃がんは、胃の壁の内側をおおっている粘膜に発生し、進行すると粘膜下層、固有筋層と胃の壁の奥深くに進んでいく。やがて最も外側の漿膜(しょうまく)を突き抜け、大腸や膵臓など、周囲の臓器に浸潤(しんじゅん)したり、がん細胞がリンパ液や血液の流れにのって離れた臓器に転移したりしていく。

■ピロリ除菌後も検診は必要

 慢性胃炎は、胃がんの発症リスクだ。主な要因は喫煙や塩分の取り過ぎ、ピロリ菌感染などである。塩分の取り過ぎによる胃がんの発生は、発生率の地域差にあらわれている。漬物や干物などの高塩分食を多くとる傾向がある東北地方の日本海側や北陸地方に多く見られる。

 ピロリ菌感染者が胃がんになる確率は1%に満たないものの、胃がんと診断された人の多くはピロリ菌の感染者であるため、感染者は除菌治療が検討される。除菌治療が成功すれば、ピロリ菌による胃がんの発生リスクは抑えられるが、塩分のとりすぎなど、ほかにも慢性胃炎の要因はあるため、除菌後も定期的な胃がん検診の受診は必要となる。

 胃がんの5年生存率はステージIで98.7%、ステージIIも66.5%あり、早い段階できちんと治療できれば、がんを克服できる可能性は大きい。早期発見・早期治療を心がけることが重要である。

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進行胃がんでも、胃はできる限り残す