■術後の療養体制充実も重要なポイントになる

 ただ、本当に根治切除ができたか、転移のリスクがあるかは、摘出した病変部やリンパ節の病理診断、腹腔洗浄細胞診で初めてわかり、術後の治療方針もこれによって決まる。

 ステージII・IIIでは、胃を残した場合も全摘の場合も、術後補助化学療法がすすめられる。

「ステージIIでは、抗がん剤の内服で10%以上5年生存率が上がったことなどをお話しして、必要な治療を受けることをお勧めしています」(大島医師)

「全摘したら、もうがんは関係ないと思われがちですが、全摘が必要な事例ほど見えないがんが残っている可能性が考えられます。そのため、全摘した人のほうが、抗がん剤が必要なケースが多いです」(西田医師)

■抗がん剤の服用のためにも可能な範囲で胃の温存を

 ステージIIでは内服の抗がん剤「S-1(エスワン)」、ステージIIIはこれに点滴の抗がん剤「ドセタキセル」が追加になる。内服薬は1年間飲み続けることから、それに耐え得る体力維持のためにも可能な範囲で胃を残すのが望ましい。たんぱく質(筋肉)確保を中心とした栄養・運動指導も、術後の体重減少を抑えるためには欠かせない。

 また、術前診断で早期がんだったため腹腔鏡手術で病変部を切除したものの、術後の病理診断の結果はステージIIIで、「がんの取り残し」の恐れが判明することも。その場合は「ガイドラインにのっとり、すみやかに2種類の抗がん剤による治療を始めることになる」と西田医師。このような事例に備え、術後補助化学療法の経験が豊富な病院かどうかにも、注目してほしいと呼びかける。

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「手術数でわかるいい病院」https://dot.asahi.com/goodhospital/

【取材した医師】
神奈川県立がんセンター 消化器外科 胃食道主任部長 大島 貴 医師
恵佑会札幌病院 副院長 統括外科部長 西田靖仙 医師

(文/近藤昭彦)

週刊朝日ムック『手術数でわかるいい病院2022』より

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