こうした点を踏まえ、日本介護福祉士会の前会長で熊本県内の特養の施設長を務める石本淳也さんは、「たとえば2時間おきに痰の吸引をしなければならないといった理由で施設での対応は無理となった場合は、施設内の相談員やケアマネが介護医療院など適切な医療機関・施設につなぐ責任があります。互いに満足のいく結果になるよう次につなぐ。これがプロの仕事と言えるのではないでしょうか」と指摘する。
(2)支払いができなくなった
親の介護費用を子どもが支払うケースも少なくない。コロナ禍で子どもの収入が減り、月々の利用料が払えず施設退去を余儀なくされたという事例もある。前出の高野さんが警鐘を鳴らす。
「介護保険の制度改正により、自己負担額が上がる傾向にあることは認識するべきです。負担割合は当初全員1割でしたが、所得制限により15年から2割、18年から3割負担の人が出るようになりました。このような点も意識して、施設選びをしなくてはいけないと思います。今の年金収入でギリギリ入居できたからラッキーだと思っていても、5年ぐらいして費用が払えなくなり別の施設に、ということにもなりかねません」
もし支払いが厳しくなったときは、負担軽減制度についての相談をするのも手だ。
「まずは、ケアマネや地域包括支援センターのソーシャルワーカーに相談しましょう。場合によっては一緒に役所にも行ってくれます。負担軽減がダメなら生活保護扱いに。それでもダメなら違う施設に、となります」(石本さん)
(3)施設職員との折り合いがつかなくなった
家族が介護職員の一挙一動にいちゃもんをつけて、時間を問わず電話をして自分の主張以外は聞き入れない。その結果、施設を転々とする。そんなケースもある。
「3、4カ所ほど移って、最終的にうちの施設に落ち着いた方がいらっしゃいました。先月お看取りをしたばかりです」(前出の石本さん)
前出の高口さんが話す。