終(つい)のすみかのつもりで高齢者施設に入ったはいいが、施設から出なければならない事態に直面するかもしれない。初めて施設を探すとき、次の施設を探すとき、どんな点に気をつければいいのか。施設選びのポイントを紹介する。
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「施設ケアには限界があります。在宅に戻るか、療養型(介護医療院)に移ってください」
東京都内で89歳の母(要介護度5、寝たきり)を介護するマリさん(仮名・60)が、母の入居する特別養護老人ホーム(以下特養)の施設長からこう切り出されたのは昨年8月のこと。
入所は今から3年前。当時は車椅子で、口から食事をすることもできていたが、徐々に嚥下(えんげ)機能が低下してきたところに誤嚥(ごえん)性肺炎で入院。胃ろうの造設に至った。その後、認知症の悪化などで意思表示が難しくなった母に代わって、マリさんが日々、ケアの希望を詳細に施設側に伝えてきた。「胃ろうでも定期的に水や好物のジュースで口を潤してほしい」「清潔さを保つため毎日スキンケアや着替えをさせてほしい」「車椅子に座らせてほしい」といった要求だった。
「人手不足だからといって、母が寝かせきりにされるのが嫌だったからです」
ある日の午後7時半ごろ、施設に電話すると、保留ボタンが押されていなかったのか、「こんな時間に電話してくんじゃねーよ」という施設長の声が漏れ聞こえてきた。
「コロナ禍で面会制限もあり母の様子がわからない。だからスタッフには細やかなケアと、日々の体調変化の報告をしてほしかった。でも対応は一向に改善されず、『退去勧告』になりました。同意しないならば施設の弁護士に対応してもらうことになるなどと言われました。このようなときに母の容体が急変し救急搬送され入院になりました」
施設長は、この3年間で3回代わった。入所時にいた職員は看護師も含めだれひとり残っていなかった。
仕事があるマリさんが医療依存度の高い母を在宅で介護するのは難しかった。急いで情報を集め、隣の区で医療的ケアが手厚い有料老人ホームを見つけ、見学希望の連絡をした。しかし、その見学の日、母は亡くなった。