small planet/Tokyo, Japan/2005(撮影:本城直季)

 そもそも、ジオラマふうの作品を撮るようになったのは、東京工芸大学で写真を学んでいた20年ほど前。学校から借りた「シノゴ」と呼ばれる大判カメラの使い方を習得するための試行錯誤がきっかけという。

「ふつうのカメラはレンズとフィルムの位置が固定されているんですが、シノゴのカメラは、その間が蛇腹なので自由に動かせるんです。通常、遠景を撮影すると、画面全体にピントが合いますけど、蛇腹の機能を使えば、画面の真ん中だけにピントを合わせて、上下をボカせる」

 当時写した習作の写真がいまも残されている。学校の近くを流れる神田川を橋の上から写したもので、画面中央にはとなりの橋がシャープに写り、背景の超高層ビルと手前の川の流れがボケて写っている。

「このとき、画面の奥や手前をボカそうとか、何も考えていなくて、この蛇腹の状態で撮ると、どんなふうに写るのかな、と思い、シャッターを切った。まあ、この写真を見ても分かるように、最初はミニチュアのようには写らなかったんです。でも、いろいろやっているうちに、その面白さに気がついた」

kenya/giraffe/2008(撮影:本城直季)

■なぜ、こんなふうに撮れたのか?

 その「原点です」と語る写真があある。02年に写した写真で、「たまたま撮影したうちの1枚がすごくミニチュアふうに見えた」。

 撮影場所は羽田空港に近い京浜運河に架かる橋の上。岸辺の公園でくつろぐ人々の姿がミニチュアのように写っている。

「これを写した後、なぜこんなふうに撮れたのか? を考えていろいろ試していくうちに、高い場所から俯瞰して撮影するとこう写りやすいことに気づいたんです。それで、池袋のサンシャイン60展望台を訪れ、窓越しに街を見下ろして撮影した」

 シノゴのカメラと格闘した約4年間。そんな作品をまとめたのが写真集『small planet』だった。一方、作品集としてはテーマやコンセプトに明瞭さが欠けていたことも自覚していた。

 それ以降、本城さんは興味の対象を絞り、作品づくりに打ち込むようになる。08年に撮影した「kenya」もその一つ。

「この技法で動物の世界を撮ったら面白いだろうな、と思って、ケニアに出かけたんです」

 作品にはゾウやキリン、カバなど、おなじみのアフリカの動物たちが箱庭のような画面に収められていて、とても楽しい。

 しかし、撮影は予想以上に苦戦した。

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