早稲田の大隈記念講堂(左)と慶應の三田キャンパス
早稲田の大隈記念講堂(左)と慶應の三田キャンパス
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 毎年1月10日は早稲田、慶應にとってメモリアルデーだ。早稲田の創立者、大隈重信(1838~1922)の命日であり、慶應を興した福沢諭吉(1835~1901)の誕生日だからだ。

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 2022年は大隈の没後100年にあたる。1月10日、大隈記念講堂であった記念式典で来賓として真っ先にあいさつした慶應の伊藤公平塾長は、この日午前、福沢の187回目の誕生記念会を実施したことを報告。昨年5月に塾長に就任後、最初の仕事として早稲田の田中愛治総長らを訪ねたエピソードも披露し、「田中総長にはいつも、早慶戦では負けたくないが、それ以外のことでは何でも協力したい、とお伝えしている」と語った。

 その後、式典では早慶の名誉教授がそろい踏みし、大隈と福沢の交流の歴史を読み解いた。

 長きにわたり切磋琢磨してきた両雄。だが平成期は、早稲田と慶應で同系統の学部に合格した場合は、慶應への進学率が高かった。

 そうした影響もあってか、早稲田は21年から政治経済学部や国際教養学部などで入試改革に踏み切った。駿台教育研究所の石原賢一・進学情報事業部長が解説する。

「政経では、従来の一般方式をやめて共通テスト利用とし、数学を必須科目に。さらに学部個別の試験『総合問題』を導入して長文の読解、記述・論述式にしました。こうした改革は受験生の負担を増やすので、志願者数の大幅減を招く。難関大にしかできない改革です」

 実際、初年度に3割近く志願者数を減らし、今年はさらに797人減らした。

(週刊朝日2022年4月1日号より)
(週刊朝日2022年4月1日号より)

 ただ、駿台が東大志望者の早稲田併願状況を追跡した調査によると、改革前の20年、政経の志願者数は一般方式、センター試験合わせて延べ1317人だったが、21年は共通テストのみで1182人。「これは明らかな成功」と石原さんはみる。

「早稲田が学問として重視しているのは統計学や論証。これができないとこれからの時代に対応できないと考え、田中総長は対象学部をさらに広げ、入試に数学を導入したいと話しています。そうした狙いに加え、全国の国公立大志望者に併願先として選んでもらい、上位層の学生を獲得したいとの試みは評価できます」

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