3月26日、フランス・モンペリエで行われていた世界フィギュアスケート選手権の全競技が終了した。アイスダンス日本代表の村元哉中、高橋大輔組は16位。 細かいミスが出て目標の10位以内には達せず、インタビューでも悔しい顔を見せた。
数字と二人の表情だけを見ると、残念な結果だったように取れる。しかし、今後の進退について明言しなかった村元・高橋組に対しては、世界中から競技続行への熱望が寄せられた。
今回村元、高橋組を上回った15組のうち、9組は結成10年以上。残る6組も皆5年以上のキャリアを持ち、内5組がそれぞれ別のパートナーとジュニア時代から活躍していた。高橋大輔にもっとも経歴が近いイギリスのルイス・ギブソンは、2015年まで男子シングルの英国トップ選手だったが、ライラ・フィアーと共に出場した初めての世界選手権は22位。村元、高橋組の16位には及ばない。
これまでの日本代表の世界選手権初挑戦を振り返ると、五輪最高位タイ記録(15位)を持つ渡辺心、木戸章之組は20位。日本アイスダンス界を長くけん引してきたキャシー・リード、クリス・リード組が16位、北京五輪代表の小松原組は21位。初登場での過去最高は村元、クリス・リード組の15位だ。2020年の結成から2季目にして16位という結果は、充分に称賛されるべき内容と言える。
村元、高橋組の場合、コロナ禍も不運に働いた。結成初年に充分なコーチングを受けられなかったこともあるが、派遣試合数が制限されて大切な「試合勘」を養えなかったことは大きい。2人が所属する、名伯楽マリナ・ズエワ率いるチームは、現在世界のトップを争うレベルの選手が村元、高橋組だけ。徹底した指導を受けられる一方で、「共に滑ることで刺激を受け、切磋琢磨が出来る」リンクメイトは居なかった。
演技後にも二人が口にしていた「経験値不足」は、ツイズルやリフトなどのミスに表れている。ただし、演技全体を俯瞰した構成点では、10点満点中で8点台を得た項目もあった。注目すべきは、「ミスのないパーフェクトな演技」での16位ではなく、本来出来るものとして組み込んでいた要素にミスが出た上での順位という点だ。今回のミスはそのまま伸びしろと取れるだけに、続行を望む声が高まるのもうなずける。