■親なら子に寄り添って

西原:個人的には、トランスジェンダーとして社会に還元できることも模索していきたいんです。私の場合は、生まれながらの女性にはない視点が多分たくさんある。もともと男性だったところから見ていた女性への考え方や、性別を移行するときに得た経験は武器になるし、お互いにメリットがあると社会を変えていけるんじゃないかな。

――もし自分の子どもがトランスジェンダーではないかと感じたとき、親はどうしたらいいか。

浅沼:親にはまず子どもに寄り添ってほしいですね。学校でいじめられているかもしれないし、近所の人から噂(うわさ)されているかもしれない。親に否定されると自分に自信が持てなくなったり、生まれてこなければよかったと、ネガティブな感情をずっと持ってしまう。子どもは逃げ場もないし、どんな生き方をしても否定しないでほしい。

西原:あと、子どもがトランスジェンダーと知ると、望んだ身体に産んであげられなかった、育て方が悪かったんじゃないかとか、特に母親が自分を責める傾向にあるなと思っていて。

浅沼:自分のせいだとは思わないでほしいですね。

西原:私は小さいときからヘアアレンジが好きだったんですけど、「女の子になりたいわけじゃないよね?」と聞かれて、とっさに「違うよ」と嘘(うそ)をついたんです。子ども心に、これは言っちゃいけないことだと思って隠すクセがついたんですが、そういうのはお互いよくないですよね。親の方にも、トランスは身近にいるんだということを知ることで、言葉のかけ方が変わると思う。

■性別は二分化じゃない

浅沼:親が子どもにジェンダーを押し付けるのもやめてほしいですね。男の子なんだから泣くな、とか。

西原:うちは、男はゴキブリを退治しないといけなくて、もう本当に嫌だった!(笑)

浅沼:宇多田ヒカルさんがノンバイナリー(自分の性自認を男とも女とも当てはめないこと)と公表しましたけど、性別はすでに二分化じゃないんですよね。性別の在り方を多くの人に考えてほしいかな、と感じています。ロールモデルがたくさん出てくるといいですよね。それが次世代の子たちの未来につながるんじゃないかなと思います。

(構成/編集部・大川恵実)

AERA 2022年4月4日号より抜粋

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