女性として生まれ、いまは男性として生きている浅沼智也さんと、男性として生まれ、現在は女性として生活している西原さつきさん。トランスジェンダーの課題について当事者の2人が語る。AERA 2022年4月4日号の記事を紹介する。
>>【前編:トランスジェンダーの深刻な貧困問題 「見た目で就職がうまくいかない」と当事者】より続く
* * *
浅沼智也(以下、浅原):FtM(エフティーエム)(出生時に女性という性を割り当てられたが男性と自認する人)の場合、性別適合手術を受け性別を男性に変更し、女性のパートナーと結婚しても、自分のDNAをもった子どもを持つことが難しい。性別変更後に、もし子どもを持つなら第三者に精子を提供してもらい、パートナーに妊娠・出産をしてもらうしかないけど、生殖補助医療のクリニックに行っても、トランスジェンダーの人は断られることも多いと聞きます。
西原さつき(以下、西原):あ、恋愛や結婚も色々と考えることがありますね。私も恋愛対象が男性のことが多いので、将来を考えたときに、子どもを作る家庭という選択肢がないんです。「養子がありますよね」と軽く言われることもあるんですけど、まあまあ覚悟がいることだぞ、と。
浅沼:シスジェンダー(生まれた性別と自認する性別が一致している人)とは、スタートラインが違いますよね。性別移行しても課題がまだまだついてくる。
西原:そう、でもシスの人たちの生き方に合わせようとするからハンディキャップになるわけで、「これが私たちの生き方です」というのを構築していくほうに、私は発想を変えました。合わないパズルのピースに自分を当てはめようとするから苦しくて病むので、もう違うパズルを始めた方がいいな、と。
浅沼:確かに。見た目を社会側にすり合わせたとしても認めてくれない人はいるし、自分らしく生きられない部分もある。それに理想と現実は違う。たとえば僕自身、性別適合手術後、ずっと更年期障害があるし、背も低いからどっちの性別なのか詮索(せんさく)されることも。自分が最終的にどうなって、どう生きていきたいのかを考えることが大事だし、焦らずに答えを出してほしいと思っています。