実施2年目を迎えた大学入学共通テストは、国語だけでなくどの科目も読解力重視が問われる内容だった。今後もこの傾向は続くのだろうか。「読解力とデータサイエンス」を特集したAERA 2022年4月4日号の記事から。
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実は、読解力を伸ばすことは国語以外の科目にも生きる。長年予備校で教え、「現代文のカリスマ」と称されてきた出口汪(ひろし)さん(66)が説明する。
「共通テストでは、どの科目でも読解力が必要とされるようになりました」
例えば、数学II・Bでは問題冊子が昨年よりも6ページも増えた。特に第4問の「数列」の文章題では、歩行者を自転車が追いかけ、追いつくとどちらも1分停止するなど移動と停止を繰り返す様子が長文で書かれ、設問では会話文まで登場。数学I・Aでも、キャンプ場から山頂を見上げたときの角度について語り合うなど会話文形式の問題が複数出題された。苦戦する受験生が多く、数学にI・Aの平均点は前年より19.72点低下、数学II・Bも16.87点下がった。
数学教育研究所の代表取締役で、予備校講師でもある清(せい)史弘さん(56)はこう分析する。
「共通テストになり、数学でも文章からどう情報をつかみ取れるかという読解力が問われるようになりました。今年はよりその傾向が強まっています。問題文が長くて、何が問われているのか理解するまでに時間がかかってしまう受験生が多かった。さらに数学I・Aでは『算数』の計算も多く、試験時間内にすべての問題を解くのは難しかった。よく練られた良問もありましたが、読解力や思考力を試すのなら、もっと時間を与える必要があると思います」
こうした読解力重視の方向性は今後も続くのだろうか。清さんはこうみる。
「文科省は日常生活で数学を活用して問題を解決する力を身につけてほしいと考えていて、今年の共通テストでも身近な問題が題材になりました。この流れは止められません。今後は問題文の中に解答に使わない余計な情報も入り、さらに長文化する可能性は大いにあります」
その他の科目でも、英語(リーディング)はすべての問題が長文読解。地理や歴史などでも複数の資料の読み解きや、会話文が出された。