結婚後に性別違和を感じた今西千尋さん(左)は、博子さん(右)と離婚後に養子縁組。形を変えても家族として支え合っている(撮影/編集部・井上有紀子)
結婚後に性別違和を感じた今西千尋さん(左)は、博子さん(右)と離婚後に養子縁組。形を変えても家族として支え合っている(撮影/編集部・井上有紀子)
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 結婚して10年、2児の父親だった男性は、「心は女性」と妻に打ち明けた。家族は一度壊れかけたが、支え合いながら新しい形を築いてきた。AERA 2023年1月23日号の記事を紹介する。

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 身体的な性別に違和感を持ち、生きづらさを感じている人がいる。自身の「性自認」に気づくタイミングは人それぞれ。なかには結婚後に気づく場合もある。

 京都市の今西千尋さん(57)は、男性として生まれ、現在は女性として暮らしているトランスジェンダーだ。カミングアウトしたのは、結婚して10年目。

 なぜ年月がかかったのかというと、子どもの頃から抱いてきた「違和感」を、はっきりと言葉にできたのが、結婚後だったからだ。

 覚えているのは、5歳の記憶。実家の離れにある押し入れに入った。姉の洋服をこっそり持ち込んで着替えた。姉の洋服を着てみたいと思っていたからだ。

 小学生のときは、留守番中に女性用の下着をつけてみたことがあった。小さな足で母のサンダルを履いてみたことも。

「そのとき、心の中を整理できていませんでした。いま思えば、女性の服を着ると、安心する自分がいました」

 女性の格好をしたい気持ちは、大人になっても続いた。東京に出張があると、新宿2丁目のスタジオで女装して写真撮影をした。それがストレス発散だった。

今西千尋さん(左)と、博子さん(撮影/編集部・井上有紀子)
今西千尋さん(左)と、博子さん(撮影/編集部・井上有紀子)

■ドラマがきっかけで

 千尋さんは男性として生きなければならないプレッシャーを抱えて生きていた。実家は鉄工所で、長男。家業を継いで、後継ぎを作ることが期待されていた。

 そんなとき、妻の博子さん(56)と出会った。前向きな博子さんにひかれて、1995年に29歳で結婚、2人の子どもにも恵まれた。ただ、女装できる店にこっそり通うのは変わらなかった。

 千尋さんが、女性の格好をしたくなるのはなぜかと気づくきっかけがあった。2001年から02年にかけて放映されたドラマ「3年B組金八先生」(第6シリーズ)だ。上戸彩が演じた性同一性障害の生徒は、女性として生まれたが、自認する性は違い、葛藤を抱えていた。

 千尋さんはこのとき、「性同一性障害」という言葉を知った。

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