週刊朝日 2022年8月5日号より
週刊朝日 2022年8月5日号より

 管理組合の頭を悩ませるのは、法定相続人全員が相続放棄を選択した場合だ。滞納された管理費等を請求する相手が存在しないことが決定してしまったことで、管理組合としての課題解決への道のりはさらに時間を要することになるからだ。

 次なるステップとして、管理組合は民法に基づく相続財産管理人選任の申し立てを行うかどうかという選択を迫られる。相続財産管理人の選任手続きをすれば、相続放棄で相続人がいなかったり、身寄りのない人が亡くなって戸籍上の相続人がいなかったりする場合、その財産の利害関係人が家裁に申し立てて認められると、弁護士らが相続財産管理人に選任され、状況に応じて売却などができるようになる。管理費などを滞納されている管理組合の場合、この利害関係人にあたるため、申し立てが可能だ。

 大和ライフネクストが4千の管理組合を対象に行った調査によれば、18年から21年までに管理組合が相続財産管理人選任の申し立てを行った事例は9件。申し立てに踏み切った主な理由は、下記のとおりだ。

 家裁への申し立てには、当然ながら費用がかかる。弁護士や司法書士に支払う費用に加え、相続財産の内容から相続財産管理人が相続財産を管理するために必要な費用として、数十万~100万円程度の「予納金」を納付する必要がある。相続財産の内容によって、相続財産管理人が相続財産を管理するために必要な費用に不足が出る場合には、この予納金から充てられるため、全額が管理組合に戻るとは限らない。つまり、申し立てを行う管理組合側の支出となる場合もあり、一定のリスクも背負うことになるわけだ。しかし現状では、この方法以外に法的な解決手段がないため、管理組合は慎重な判断を迫られることになる。調査を行った前出の久保さんは言う。

「たとえ区分所有者が不在になったとしても、管理費等は口座引き落としが一般的で、口座残高があるうちは、未収金の問題が表面化しないこともあります。問題が表面化するまでの時間には差がありますが、共通して言えるのは、問題として認識された後に、管理組合として検討を開始してから解決までには“年単位”の時間を要するということ。今回調査した事例では、1年より短い期間で解決したものはなく、最長で3年7カ月ほどかかっています。そのため、管理組合の役員が輪番制の場合には、役員間での方針や情報の引き継ぎが重要になります」

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