大手マンション管理会社の大和ライフネクストが、同社が管理する約4千の管理組合を対象に行った調査によれば、18~21年に組合が相続人調査をした事例は27件に上った。
「この数字は今後、マンションに住む区分所有者の高齢化、単身化によって、ますます増加していくのではないかと予想しています」とは、調査を行ったマンションみらい価値研究所所長の久保依子さんだ。
管理組合が動き出すまで相続を開始する気配がないということは、法定相続人とも疎遠になっているか、すでに相続放棄している可能性が高い。疎遠にしていた親族からすると、区分所有者本人がどのような生活をしていたのか、またマンション住戸以外の相続財産や借金がどの程度あるのかなどの情報も得づらく、「単純に区分所有者の死を知らないだけであったとしても、相続放棄へと進む事例がこれまでにも複数見られています」(久保さん)。
相続人調査によって相続人がいると判明した場合、管理組合はその後の手続きをどう進めるのか。組合は弁護士などに依頼し、家庭裁判所に相続放棄申述の照会を行い、もし相続放棄をしていない該当者がいた場合には、相続をするか否かの確認へと進む。相続については民法で「相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内に相続について単純もしくは限定の承認または放棄をしなければならない」と定められている。
相続放棄の期限も3カ月以内だが、それは「自己のために相続の開始があったことを知ったときから」。基本的には、相続放棄の期限の起算点は「被相続人の死亡を知ったとき」となるが、そもそも自分が相続権を持っていると認識していない場合もあり、こうした場合は、「知った時点」から3カ月以内となる。
該当者が相続を選択した場合は、区分所有法の規定により、新たな区分所有者にこれまで滞納されている管理費等の請求ができるため、管理組合としての未収金についての課題は解決される。