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 増え続ける“空き家問題”は、戸建て住宅に限ったことではない。マンションにおいても深刻化しつつあるという。それも集合住宅ならではの難しさがあり、対策も一筋縄ではいかない現状がある。本誌が実態を追った。

【図表】管理組合が相続財産管理人選任の申し立てを行った理由はこちら

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「ここ2年ほど、管理費などが支払われていない空室がある」「一体どのように対応したら良いのか」──。

 栃木県のとある分譲マンションの管理組合で、目下の悩みのタネが、この空き部屋問題だ。部屋の区分所有者だった女性が2年前に亡くなってから空室になっており、管理費や修繕積立金などが支払われていない状況が続いているのだ。

 管理組合がマンションを管理していくためには、さまざまな費用がかかる。その費用をまかなうために区分所有者から毎月徴収しているお金が、管理費と修繕積立金だ。管理費は管理会社への業務委託費のほか、理事会の運営費や共用部分の光熱費など、日常の管理に充てられる。一方、修繕積立金の使い道は、大規模修繕工事など建物の維持管理に使われる。

 建物の区分所有者に関する法律には、「特定承継人の責任」という条項があり、管理費等を「支払えない」または「支払わない」区分所有者がいたとしても、所有権が移転した場合には、新しい区分所有者に滞納管理費等を請求できる。このケースにおいても、女性が亡くなってからしばらくは、所有権の移転を待っている状態だった。

 ところが待てど暮らせど、何の知らせもない。女性が亡くなった後、マンション住戸の相続が行われていないとしたら、管理費等の請求対象となる区分所有者が存在せず、所有権の移転がなされないことになる。管理組合にとって大きな問題だ。

「急がないと、このままでは滞納された管理費などの回収が不可能になるかもしれない」

 そう考えた組合は、事態を把握するための行動に出た。急ぐ理由は、管理費等の請求権は、5年という時効があるからだ。まず不動産登記簿謄本を取得し、抵当権の設定の有無について確認。抵当権がないことを確認した後、管理組合宛てに届け出がされている情報を元に、亡き女性の息子と思われる連絡先へ電話した。するとマンションの部屋は「相続放棄した」という。他に法定相続人になりうる親族がいるのか、その後どうなっているのか聞くものの、「わからない」の一点張り。他にも親族はいるが、疎遠なこともあり、状況が掴めていないという。息子からは「相続放棄した自分には関係ないことだから、もう連絡しないでくれ」と言われてしまった。組合に届け出がされている連絡先は、息子以外にはいない。

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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