これまでは協力会社への発注にファクスを使うなど、アナログな作業に忙殺されていた。それがクラウド化によって、工程管理がスマホひとつで可能になり、情報共有も簡単になった。
また時短や効率化の効果は、離職率の抑制や、入社希望者が9倍に膨らんだことにも表れているという。
だが、大口さんは人材獲得競争に勝つのが目的ではないと強調する。
「生産性が上がれば給与を上げますよ、と呼び掛けるだけだと、お金で釣る感じになるので良くないと思っています」
さらに年1回、本人または家族の誕生日や結婚記念日に取得できる特別休暇など「会社を好きになってもらう」制度の充実にも努めている。
企業の労務管理に詳しいリクルートワークス研究所の村田弘美主幹研究員は「週休3日制の導入企業は大きく三つのタイプに分類されます」と言う。
週の労働時間や業務量の総量は変えない(1)圧縮労働型、週の労働時間や業務量を削減して給与などを対応させる(2)報酬削減型、労働時間は減らすが生産性を上げて業績や品質を維持させて給与などは変えない(3)報酬維持型。(1)と(2)は国内に多く、欧州では(3)が主流だという。
欧州ではアイスランドの取り組みが成功を収めた。同国政府と首都レイキャビク市議会は15~19年に労働時間を短縮する大規模なトライアルを実施。大半の職場で生産性やサービスの質が維持、向上しただけでなく、労働者のストレスやWLB、燃え尽き症候群なども劇的に改善することがわかった。
■自分の時間を「行革」して、主体的に効率化に努める
村田さんは背景に「働き手のモチベーション」を挙げる。
「報酬を維持するには仕事のクオリティーを下げないことが前提になりますが、平日に休めることがモチベーションになり、それぞれの働き手が自分の時間を『行革』して主体的に効率化に努めたのが大きいと思います」
アイスランドは他の北欧諸国に比べて長時間労働の習慣が根強く、生産性やWLBの低さが課題とされてきた。「週休3日制の導入が打開策として有効に機能しつつあります。日本も目指すべき方向だと思います」(村田さん)
国内はどうか。同研究所が19年に実施した「全国就業実態パネル調査」によると、週休3日で働いているのは就業者全体の8.2%にあたる546万人だった。大半はパート・アルバイトで、正規雇用者で週4日勤務の割合は1.7%(49.3万人)にすぎない。注目すべきは、週4日勤務の正規雇用者のうち「幸福だ」と感じている人は55%にのぼり、週1~7日の勤務者の中で最も高い点だ。