大宮:先生はどんな学生でした?
養老:周りには、本を読みながら歩いているやつがいたら、お前だとわかる、と言われていました。
大宮:私も受験勉強は歩きながらしてました。「二宮金次郎」って言われてました、陰で。
養老:「逍遙(しょうよう)(散歩)学派」っていうんです。歩きながらのほうが頭が回るんですよ。
大宮:教えてらっしゃって印象に残ってる生徒さんいらっしゃいます?
養老:下宿の壁と天井に解剖のデッサンを描いたやつですかね。
大宮:!! アーティストですね。先生、いまでも覚えているすごい授業もあってこれは次回に話しますが、つまんない授業も結構あって……。大学の最高峰と言われたりするのにどうしてそうなっちゃうのかと。
養老:教師は「シラバス」といって、1学期分の講義予定を全部書かされる。そうなると学生だっておもしろくないでしょ。僕は「教師が途中で気が変わったらどうするのか」と書かなかった。
大宮:講義はセッションですからね。先生、東大を面白くするにはどうしたらいいでしょう?
養老:東大って枠を外したほうがいい。研究者ってわがままだから基本的な給与をあげてあとは好きにしろと。一番いい方法のひとつは、今のような状態だったら東大は入試を通ったらそれを卒業証書にしちまえって。学歴ってのが重要なだけだから。そうして本当に勉強したい学生が残ってくれれば教師も考えます。
※AERA 2022年4月11日号