今年でデビュー22年目のシンガーソングライターつじあやの。1月にリリースした10年ぶりとなるアルバム『HELLO WOMAN』のジャケットには、画家・有元利夫が「占いのテーブル」で描いた、微笑んでいるようにも、悲しんでいるようにも見える一人の女性の姿があった。結婚、出産を経て母となったつじが、今一番表現したい“完璧じゃないWOMAN”。喜びも悲しみもそのままに綴った『HELLO WOMAN』への思いを聞いた。
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──つじあやの10年ぶりとなるアルバム『HELLO WOMAN』。40代に突入したつじが、その人生の中で見つけてきた様々な自分、様々な”WOMAN”を歌った1枚だ。これまでの穏やかでさわやかで、陽だまりのようなイメージは、いい意味で裏切られる。
10年ぶりということで、どんなアルバムを作ろうか、スタッフともかなり長い時間をかけて話し合いました。最初は「風になる」みたいなポップソングをたくさん入れたいなと思っていたんです。ただ、ディレクターが「もっといろいろあったでしょ?」「僕はそういうのが聴きたい」と。せっかくだから“今までになかったつじあやの”も見せていこうと提案してくれて。確かに、生まれてきてこの44年、いろんなことがあって、振り返ればいろんな“WOMAN”がいたんですよね。
──自身のこれまでの歩みの中でも、結婚、出産、子育ての経験は「とくに大きな転機だった」と語る。
うちの子は今5歳なんですけど、子どもというのはそれまでの価値観をいとも簡単に崩していきますね(笑)。予期しないことがいっぱい起きて、私の思い込みやらなんやらがリセットされて、自分のことを俯瞰で見られるようになったというか。
コロナもそう。誰かが亡くなられてすごく悲しくても、お葬式すらできない。この世は自分の思い通りにならないことだらけだと。先もなかなか見えないし、白黒つけられない世の中なんだなっていう中で、「おやすみなさい」や「お別れの時間」という曲は生まれました。
今までは“辛いこともあるけど頑張っていこう”みたいな曲が多かったんですけど、それだけではないのかなって。正直に“辛い”と伝えることで、その曲が今辛い人たちの応援になるのかなと。