「お別れの時間」を作った時には、自分でも不思議な感覚だったんですけど、子育てして音楽もやって、すごく充実しているはずなのに、ぽっかりと心に穴が開いているような感じがして。自分って何者なのか?とか、いろんな肩書きを取り除いて街を歩いていたら、自分はどんな風に見えるのかな?とか、そんなことをふと思うことがあったんですね。その感覚を言葉にするのは今しかできなかった。10代20代の頃には絶対できなかったんじゃないかと思います。
■印象的だったAmazonレビュー
──恋愛、結婚、出産、子育て。女性の様々なライフスタイルを切り取った本作だが、「女性だけでなく、男性にも聴いてほしい」とつじは言う。
世代や属性を超えて通じるところがきっとあるんじゃないかなと思っていて。たとえば恋愛において、勝ち組と負け組があるとすれば、自分はいつも負け組にいたなっていう感じがすごくあるんですけど(笑)、そういう感覚に男女の違いってないと思うんです。
だから、曲の中で“私”と歌っていても、それは“僕”なのかもしれない。「お別れの時間」は、43歳になった自分がふと抱いた感覚ですけど、もしかしたら10代でその感覚がくる人もいるかもしれないし、もっと先の人もいるかもしれない。そういう時にこの曲を思い出してくださって、辛い時に“自分だけじゃないんだな”って感じてもらえたらいいなと思います。
──本作のリリースからすでに4カ月が経つ。つじの元にはリスナーからのどんな声が届いているだろうか。
先日、仲のいい友だちが「アルバム聴き始めたよ~」と言ってくれて、その時はとくに感想とかなかったんです。だけど2週間ぐらいして、その友だちと会って全然違うことを喋っていたら、突然涙を浮かべて。「アルバム聴いたらいろんなことを思い出した」って言いながら、泣いてくれました。
あと、印象的だったのはAmazonのレビュー。「まだ聴いてないですが」という方が「どんだけ待たせんの?」「こんなに長く待たせたらもう熱も冷めますよ」と書かれていて。それを読んでちょっと落ち込んでいたんですね。でも1カ月後ぐらいに夫が「前にAmazonでマイナスの書き込みしてた人が書きかえてた!」って教えてくれたんです。「え!?」って思って、見たら「訂正します」と。「聴きました。これはもしかして名作じゃないですか?」って。嬉しかったです(笑)。「この熱が冷めないうちにまた作品待ってます」とも書かれていたので、そこは肝に銘じます。