また、MLB専門局の『MLBネットワーク』の番組「MLBセントラル」(4月13日放送)で言及されたのは、鈴木の「チェイス・レート」(振らなければボールと判定される球を振る確率)が15打席で5.0%という数値であることだった。一般的にこの数値が低い方が優秀な打者とされるが、鈴木の数値は際立って低く、同番組で解説を務める元カブスのマーク・デローサ氏も「本当に特別な選手だ」と話した。

 複数のメディアが指摘する空振りの少なさについて、鈴木は、4月12日のパイレーツ戦後の記者会見で「まだ4試合なんで、分からないです」と話したが、確実に順応し始めていると言えるだろう。

 他には、「ストライクゾーンへの対応力が、この活躍の理由だ」と指摘するメディアもいる。スポーツ専門紙『スポーティングニュース』の4月13日の記事では、「ストライクゾーンに対するセンスとバランスが良い」と分析。また、カブスのアンディ・グリーンコーチも「(開幕以降)ストライクゾーンをうまく見極めれるようになった」と話している。いずれにしても、これだけ早く期間に結果を残す日本人ルーキーの活躍が続くことに現地は期待を寄せる。

 一方、鈴木と同い年で昨季ア・リーグMVPの大谷翔平(エンゼルス)は、いまだ本調子とはいかない様子だ。14日現在の打撃成績は、29打席5安打3得点、打率.172で、ホームランはまだ1本も出ていない。一方、ここまで四球は1個と、昨季終盤に悩まされていた「勝負を避けられる」といった状況はない。

 大谷の打撃不振には現地メディアからも心配の声が上がっている。『AP通信』のグレッグ・ビーチャム記者は自身のSNSで、「大谷は今日も3三振で、これで計8個。24打席で3安打とスランプに陥っている」(4月12日)と指摘。だが、エンゼルスのジョー・マドン監督は、「問題ない。スイングは良い状態で、いずれ良くなる」と突っぱねている。

 たしかに大谷のスイングは昨季以上に威力を増している。4月10日のヒューストン・アストロズ戦でのことだ。この試合、大谷は第2打席でライト線へのエンタイトルツーベースを放った。今季初の長打は、大谷自身の記録を塗り替える超速の一打で、その打球速度は119.1マイル(約191.7キロ)。左打者ではMLB歴代1位の記録だ。

 また、本人も落ち着いて試合に臨んでいる。4月11日の本拠地でのマイアミ・マーリンズ戦の途中、大谷はダグアウトで自分のバットに心臓マッサージと人工呼吸を行うしぐさをみせた。この様子は瞬く間にメディアに取り上げられ、MLBの公式メディア『MLB.com』は「大谷は、投手で、DHで…MD(医師)か?」と報じ、「5試合で打率.143、5三振の大谷は、状況を好転するためバットに新しい命を吹き込む必要があったのかもしれない」と伝えた。

 大谷本人がポジティブな姿勢で試合に臨んでいることは、多少の安心にはなるだろう。ファンとしては、1日でも早く快音が聞こえてくることに期待したいが、それはもう少し待たねばならなさそうだ。開幕から一週間。MLBはベテランやルーキー問わず、それぞれが最高のパフォーマンスでシーズンを盛り上げている。開幕から絶好調の鈴木と快音がまだない大谷。今後、彼らがMLBを盛り上げてくれることを願いたい。(在米ジャーナリスト・澤良憲/YOSHINORI SAWA)

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