認知症に限らず、要介護の患者さんは口を開けているのが大変ですので、治療は短時間に、歯科用ユニットも起こしぎみにして、苦しくならないようにしています。

 認知症の患者さんを診療していて気づいたこともあります。

※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)

 ある患者さんがいつもと違ってとてもイライラしており、家族もお困りだったのですが、その原因が歯だったのです。

 具体的にはぐらぐらと取れそうな歯があり、処置をしたところ落ち着き、患者さんはとても穏やかになったのです。不快感がなくなり、快適に食事ができるようになった結果かもしれません。いずれにせよ、ご家族にはとても喜ばれました。

 また、歯を診ると認知症の兆しがわかることがあります。それまできちんとみがけていた歯が汚れ始める。プラークが残るようになり、ここ何年もなかったむし歯や歯周病が見つかる、などです。

 加齢の影響で手を動かしづらかったり、長時間、みがけなくなったりということもあるでしょう。このような患者さんには、それまで3カ月間隔だったメインテナンスを1カ月間隔など、来院期間を短くし、みがけていない部分のこまめなクリーニングを提案しています(ただし、ご家族の付き添いが必要な患者さんの場合はあまりメインテナンスの期間が短いと、ご家族の負担が大きくなってしまうのでご相談して無理のない期間で決めるようにしています)。

 口の中をきれいに維持できていた患者さんが、認知症などの影響からそれができなくなることは、主治医としては避けたいことなのです。実際、口の中が汚れてしまうと誤嚥性(ごえんせい)肺炎など命にかかわる病気を起こしやすくなりますし、新型コロナウイルス感染症も重度の歯周病などがあると、重くなりやすい可能性があることは、過去の記事で指摘した通りです。

 今はどの地域でも高齢の患者さんが多いので、認知症であっても診てくれる歯科医院は多いと思います。ただし、温度差はありますので今回、「高齢者にやさしい歯科医院の選び方」を挙げてみました(以下)。こちらを参考に選んでいただければ幸いです。

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高齢者にやさしい歯科医院の選び方