映画の場面 (C)2021 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED
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 付き合うなかで初めて知ったことは「彼らがいかにして彼らになったか」ということだ。彼らの生い立ちや彼らが触れてきた文化など、僕がいままで知らなかったことがたくさんあった。最初、彼らに「スパークスになる前、2人に影響を与えた曲のプレイリストを作ってくれないだろうか」と頼んでみた。そうしたら彼らから100曲くらいが入ったリストが来たんだ。ポップミュージックからジャズ、クラシックにオペラ……「なるほど!」と思うものもあったし、なかには「え?これに?」と思うものもあった。

――50年以上にわたってクリエーティブを続ける彼らの凄さが、映画からよく伝わります。取材を通じて、彼らの「創造性の秘密」を垣間見ましたか? 

 仕事をする上での彼らの倫理観というと大げさだけれど、そうしたものを強く感じた。彼らは週5か6日、朝10時から夜6時まで音楽に向き合って仕事をしている。僕だってそんなに毎日は働けないよ(笑)。彼らは自分たちのやっていることに対して常に真剣で、パッションを忘れない。彼らには不遇な時代もあった。でもそのときも前に進むことを忘れず、自分たちを信じてきた。「いまは気づいてもらえないけれど、自分たちのよさは絶対にあるんだ!」と自分自身に言い聞かせているようなところもあるのかもしれない。

――ベックやデュラン・デュラン、ビョークなど、総勢80名もの関係者やアーティストたちがインタビューに答えています。決して世界的にメジャーとはいえない彼らが、これだけ多くのクリエーターに影響を与えてきたとは驚きでした。

 彼らは常に「新たな自分」を自分たち自身で作ってきたんだよね。物づくりをしているとある時代やあるシーンにすごくウケて、ものすごいヒットが出ることがある。人間は一度ヒット作が出るとまた同じことをしてヒットを繰り返そうとするものだけれど、彼らは一度ヒットが出ても、そこからスッとに次へ向かい、気づくと先へ行っている。それはときにレコード会社やファンを驚かせ、がっかりさせたりもした。それゆえにファンが離れたり、不遇な時代もあった。でも彼らは後ろを見ないで、常に前に進み続けた。そして50年経ったいま、それはものすごく未来を見据えた、持続性のある懸命なあり方だったと思う。

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