
兄ロン&弟ラッセルによるアート・ポップ・デュオ「スパークス」。1972年のデビュー以来、幾多のアーティストに影響を与えてきた。レオス・カラックス監督とコラボした映画「アネット」でも再び注目が集まる彼らを、ファンを公言するエドガー・ライト監督が3年かけて追った。新連載「シネマ×SDGs」の2回目は、監督のロングインタビュー。
――「スパークス・ブラザーズ」は、監督にとって初めてのドキュメンタリー映画ですね。製作のきっかけはツイッターだと聞きました。
そうなんだ。僕は5歳で彼らの曲に出会って以来のファン。2015年に「ベイビー・ドライバー」の脚本を書きながらアルバムを聴いて、再び「スパークス、いいなあ!」と盛り上がった。「そういえばスパークスって、ツイッターやっているのかな?」と思って調べたらやっていて、しかも僕をフォローしてくれていたんだ! すぐにDM(ダイレクトメッセージ)を送って「本当に本物だよね?」と聞いたら、ラッセルからすぐ「本物だよ」と返信がきた。ツイッターアカウントを自分で管理しているバンドなんてほとんどいないよ?(笑)。それで「いまどこにいるの?」と聞いたら「ロサンゼルスだよ」と。40年来のファンだった彼らが実はすぐ近くに住んでいることがわかったんだ。2日後には一緒に朝食を食べながら、コーヒーを飲んでいたよ。
――大好きなバンドを取材対象にすることで、緊張しませんでしたか?
よく「自分のヒーローには会わないほうがいい。幻滅させられるから」と言うよね。でも彼らの場合それは一切なかった。実は2015年に初めて会ってから映画の撮影が始まるまで3年くらいあったんだ。その間に何度も会って食事をしたりして、人間としての彼らに触れことができた。彼らがいかにおかしくてチャーミングで、謙虚で、ユーモアのセンスがあるか、を知ってそんな彼らを映画にできたらおもしろいと思ってはじめたんだ。