林:そういう話聞きますけど、私なんか信じられないですよ。

浅野:そういう時代に乗り切れない、と思っているわけではないんですが、そもそものニーズが減っていることはたしかですね。ただ、ドラマもすてきですが、舞台というのは時間をかけて一つの芝居をつくっていくものでしょう。それが私に向いてるかもしれない、という気がしてきたのが50代半ばぐらいでしょうか。ですから、少なくとも年に一度は舞台に立たせていただきたいという気持ちはあるんです。

林:ドラマって、数字(視聴率)があんまりよくないと、その矛先が主演の女優さんに向かっていくじゃないですか。それで、人気がなくなった、みたいなことを週刊誌が書きますよね。それに、いま若い人ドラマ見ないし。

浅野:そうなんですよ。最近、テレビ離れって言われますよね。おっしゃるとおり、制作してるのは演技者じゃなくて、プロデューサーであり脚本家であり演出家であり……、ドラマもたくさんの人がかかわって作っているのに、その中で演じる人たちだけが数字で「ダメだったね」「よかったね」って言われる。そういうことを何度も経験してきました。それって、けっこうつらいものがあります。

林:そうですよね。そこにいくとお芝居は……。

浅野:芝居を観たいと思った人が、自らチケットを買ってくださって、足を運んでくださるというのは、ほんとにありがたいことですね。

林:浅野さん、正統派女優として「細雪」(2019年)もおやりになりましたよね。あのときは鶴子さんでしたっけ。

浅野:はい、長女の鶴子でした。

林:ムードとしては雪子さん(三女)なんかがぴったりする感じがするけど。

浅野:長女の役、おもしろいですよ。いけずで(笑)。

林:あれは代々、名女優さんがなさいますよね。

浅野:高橋惠子さんの鶴子さんもステキでした。

林:そのとき私、見ましたよ。次女(幸子)が賀来千香子さんでしたね。長女は確かにいけずですけど、貫禄がないとダメだし、家のことが第一で、「あんたらはどうだってええんよ」みたいな感じですよね。浅野さんは神戸のご出身だから、ああいう感じはわかるでしょう?

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