バイリンガル育児は、親と子の真剣勝負である。
いや、勝負しなくていい親子もいるとは思うのですが、多くの家庭は強い意志とたゆまぬ努力によって日々言語習得に励んでいるというのが、周りのバイリンガル育児奮闘中仲間を見回して抱く感想です。
わが家も例外ではなく、頑なに英語をしゃべろうとしない3歳男児と、彼と共謀して英語を拒否しつつある6歳女児、そしてなんとか英語を使わせようとする母親(わたし)との間で激しい攻防戦が繰り広げられています(英語話者の父親とは英語でコミュニケーションをとっているので、それでいいといえばいいのかもしれませんが……日本に住んでいるとどうしても日本語偏重になるので、家の中は英語にしたいのであります)。
子どもたちが日本語で話しかけてきたら、「Let’s speak English at home(家では英語で話そうね)」と英語で返事するようにしています。英語ができるとグランマ(父方の祖母)やいとこたちとお話できるでしょ、と親子で目的共有をしたはずなのですが、母の立場は劣勢です。というのも、子どもたちの何が何でも日本語で通そうとする作戦が巧妙すぎるのです。
たとえば、なぞなぞ攻撃。普段からなぞなぞ大好きな6歳娘が、こう聞いてきます。
「『かん』は『かん』でも、食べられる『かん』はな~んだ?」
娘以上になぞなぞ好きなわたしは、つい娘の誘いに乗ってしまいます。
「そんなの簡単、『みかん』でしょ」
「ピンポーン」
娘は間髪入れず、こう続けます。
「じゃあ第二問。『かん』は『かん』でも、食べられない『かん』はな~んだ?」
え、「かん」って食べられないんじゃなかったの? ていうか「かん」って缶? などと困惑しつつ、食べられない「かん」ならいくらでも思いつくぜと母は胸を反らして答えます。
「まずね、『としょかん』。あとは『びじゅつかん』。『はつぶつかん』とか『しりょうかん』もあるよ。大きな建物の名前には、後ろに『かん』が付くことが多いの」
なぞなぞをきっかけに国語の知識を身に着けさせるのだ……なんて得意げになっていたら、いかん、まんまと日本語をしゃべっているではないですか。完全に子どもの術中にはまっています。