姜尚中(カン・サンジュン)/東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史
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 政治学者の姜尚中さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、政治学的視点からアプローチします。

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 北朝鮮はウクライナ情勢に便乗してミサイル発射を連発している──。この「便乗して」という言い方をメディアが使っているのを目にしますが、それは正確ではありません。

 なぜなら、今年1月の朝鮮労働党政治局会議で金正恩(キムジョンウン)総書記は、米国との間の「信頼構築措置」を全面的に見直すと宣言し、2018年に表明した大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験や核実験の中止の見直しも辞さない構えを示しているからです。

 言明の通り、北朝鮮は弾道ミサイルの発射実験を続けています。恐らく、ロシアのウクライナ侵攻は北朝鮮にとっても寝耳に水で、それとは関係なく早い段階で米バイデン政権には局面打開の新しい展望はひらけないと見切っていたのでしょう。

 長い間、制裁漬けだった北朝鮮。餓死者が出ているかもしれない一方で、長期にわたって凌(しの)いできているのも事実です。通常兵力は大変なお金がかかります。結局、北朝鮮が選んだのは、核とミサイルに集中し、これによる武装化を図ることでした。

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