「『TJ手術をするかどうか?』を決断しなくてはならない時が来るはず。これは160キロ超えの豪球を武器にする投手の宿命です。もちろん健康で行ければ最高ですが、仮にそうなったとしてもポジティブに捉えて欲しい。手術ではなくメンテナンスの1つだと考えるべきです」
TJ手術とは内側側副靱帯再建術のことで、1974年にフランク・ジョーブ博士が考案した手術方式。身体の別部位の正常な腱を摘出し、損傷した部位へ移植することで患部の修復を図る。当初は成功率がかなり低いとされたが、調査の結果、近年は手術を受けた80%を超える投手が実戦復帰を果たしパフォーマンスが回復したとされる。
「TJ手術は車のタイヤやオイル交換と同じでメンテナンスという考え方です。ベースボールの1つのピースとも言えます。仮にTJ手術を受けて休んでもパフォーマンスは落ちないと考えられ、評価に影響も及びません。大谷翔平もTJ手術をやっても投打で復活、昨年はMVPを獲得しました。今後は想像できないほどの大型契約が待っています」
大谷は2018年6月に右肘靱帯部分断裂が判明。当初はPRP療法などの保存療法を試したが、同年10月にTJ手術を受けた。投手としての復帰に1年以上の時間を要したものの、見事にカムバックを果たした。ちなみに日本ハム時代の17年10月には右足首、19年9月には左ヒザの手術を受けている。それでも二刀流で素晴らしいパフォーマンスを発揮し、今ではメジャーの顔となっている。
「TJ手術を受ける方がスマートな投手という考え方すらあります。ジャスティン・バーランダー(アストロズ)が良い例です。TJ手術を受け1試合も投げなかった年のオフに好条件で契約延長しました。(当時)38歳でしたが、今後パフォーマンスが上がり結果を残すという判断です。また、ダルビッシュ有(パドレス)も多少の時間を要しましたが完全復活を果たしました」
バーランダーは長年タイガースのエースとして活躍し、17年途中にアストロズ移籍。毎年開幕投手を任される大黒柱として投げ続けたが、20年の開幕直後に右前腕の張りで負傷者リスト入り。同年9月にTJ手術を受け、翌21年は登板なしに終わったが、同オフに2年総額5000万ドルで再契約を結んだ。加えて1年目終了後にオプトアウトできる条項が含まれる破格契約だった。
ダルビッシュもレンジャーズ時代の15年にTJ手術を受けた。17年には移籍したドジャースでワールドシリーズ出場を果たすも、カブスへ移った翌18年には右肘痛が再発。同年はメジャー登板8試合に終わったが、20年に8勝を挙げ日本人初となる最多勝のタイトルを獲得。サイ・ヤング賞の有力候補に挙げられるほどの完全復活を果たし、オフには世界一を狙うパドレスへ複数交換で移籍した。