■社員の独立まで支援

 セミナーに参加した美容師らとのLINEグループを作り、インスタグラムへの反響がわかるインサイトも共有。人気の指標ともなるため、当初は共有に抵抗もあったというが、武者さんが「他の人の投稿が伸びていると、頑張らなきゃって活力になった」と話すように、美容師たちは切磋琢磨(せっさたくま)しながらフォロワーを増やしていった。

 インフルエンサーが活躍すれば、これまでにない角度から自社製品をアピールできる。ここで気になるのは、企業と社員の距離感だ。インターネットマーケティングが専門の上智大学経済学部の新井範子教授はこう指摘する。

「社員に(会社の顔として)仕事を任せる以上、マーケティング視点だけでなく、人事管理や労務、会社の存在意義や働き方も問われてくる。突き詰めると、その会社が社員からどう思われているかや、どんなモチベーションで働いているのかというところに跳ね返ってきます」

「ショップ販売員兼インフルエンサー」という肩書を導入したバロックジャパンリミテッドでは、社員のSNSアカウントと会社のECサイトを連携。購入につながればインセンティブが入る仕組みを導入している。さらに希望する社員への独立支援もしているという。広報担当の橋本純さんは言う。

「本音を言えば、社員の独立は損失でもあります。でも、会社の根底にはその人が一番幸せであってくれることがいいという考え方がある。退社後も弊社ブランドで商品プロデュースを手掛ける人など、関係が続いている人もいます」

(編集部・福井しほ)

AERA 2022年5月2-9日合併号より抜粋

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