社員の自分らしさを活かし自社商品の魅力を代弁する「社員インフルエンサー」。店に行けば会える販売員や美容師が発信することで、お客さんは商品を身近に感じることができる。どんな業種が向いているのか。AERA2022年5月2―9日合併号の記事を紹介する。
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美容室専売の商品を製造・販売する大手ヘアケアメーカー「ミルボン」では、美容師を通じて顧客との接点を増やしている。韓国発の巻き髪「ヨシンモリ」を得意にする武者ひなのさんもその一人だ。
<かわいいって言わせちゃう>
<一緒にやる用! 苦手意識がなくなる!>
武者さんのインスタグラムには、こんな文言とともにヘアアレンジ動画がずらりと並ぶ。どれも数十秒の短いものだが、髪の巻き方やクリップでのまとめ方などがわかりやすいと評判だ。
150万回以上再生される動画もある武者さんだが、1年前のフォロワーは2千人弱。投稿しても手応えが感じられない日々が続いていた。
だが、21年4月以降、フォロワーが増え始める。それを陰で支えたのがミルボンだった。同社経営戦略部の池田龍正さんはこう振り返る。
「美容師さんのフォロワーを増やすきっかけづくりを支援したいと、20年の秋頃からSNSに特化した講習会を始めました」
武者さんも参加した。
「どうしてSNSのリーチ(投稿を見た人の数)が伸びないのかは自分ではわかりづらい。聞ける環境があったのは大きかった」(武者さん)
ミルボンは講習会の開催以外にも、投稿にフィードバックするなど、約140人の美容師に伴走してきた。また、美容師一人ひとりのリーチが伸びるよう、ミルボンのハッシュタグのついた投稿も積極的にシェアしている。
「フォロワーを増やしてあげたいというより、素晴らしい美容師さんの存在を伝えたかったんです」(池田さん)
フォロワーの増加とともに、サロンで武者さんを指名する人も増えていく。月20人ほどだった新規顧客が倍以上に。武者さんの知名度が上がることで、ミルボン製品の認知度も高まっていった。池田さんは言う。
「美容室専売の商品なので、一般のお客様に届くには時間がかかりますし、ミルボンとして告知しても、買える場所は美容室になる。それなら、お客様自身が信頼している美容師さんを通じて知っていただくほうがいい」