野口:いろいろ言ってる割に、僕も特任教授で大学戻ってるので……。
大宮:なんと! 野口さんが学生さんを教えてるってことですか。
野口:僕の所属は、駒場にある先端研(先端科学技術研究センター)で、大学院以上の学生の研究室。講義は持っていなくて、修士論文、博士論文のお手伝いをしてます。
大宮:先端研のあるとこって、駒場公園の近くじゃないですか。
野口:よくご存じで。日本民藝館とかあるんだよね。
大宮:普通に散歩したらこんなところに先端研がある!!って。
野口:そうそう。
大宮:大自然の中にあるっていうのが、いいですよね。
野口:大自然っていうか、打ち捨てられた感じが……(笑)。先端研なのに、時代の後端をいってる。
大宮:いやあ、そのギャップがいいですね。
野口:そうなんです。そういうのはやっぱ東大落ち着くなと思います。本郷も散々悪口言いましたけど全般的には落ち着く場所でした。
大宮:はい。
野口:いわゆる社会に全く役に立ちそうにない空間なんですよね。23区で極めて地価が高くて社会のために役に立たない空間は大学しかない。今や、東大はその最たるもの。それはそれで意味がある。
大宮:無駄もいい。遠回りもいい。
野口:効率を求めなくて許される空間がたぶん大事なんだと思います。
※AERA 2022年8月1日号