20人近い弁護士が所属する事務所で一番の新人だ
20人近い弁護士が所属する事務所で一番の新人だ (撮影・高橋奈緒〈写真映像部〉)

■根を詰めすぎて体はふらふらに

 そこで、1科目200分から300分の解説授業の教材を1科目丸2、3日かけてノートにほぼ書き写した。これで根を詰めすぎたのか、ストレスのせいか体調が悪くなり、二回試験前日の今年3月22日に軽いふらふら状態になった。

 翌日から土日を挟んで5日間5科目(検察、民事弁護、民事裁判、刑事弁護、刑事裁判の順)の試験が始まる。

 1科目は午前10時20分から午後5時45分までの7時間25分である。合計37時間5分。司法試験の4日間19時間55分よりずっと長い。二回試験では、長いもので約100ページある記録を読んで答案構成をし、論文を書き上げなければならない。

 ふらふらで思考力、体力が持つか心配になって病院に行ったら、点滴をしてくれた。そのおかげか体調はかなり回復し、翌日司法研修所に乗り込むことができ、1科目が終わるたびに疲れて家路についたものの、薬を飲みながら長丁場を乗り切った。

 結果発表は4月19日の夕方だった。最高裁判所のHPに不合格者の番号が発表された。恐る恐るアクセスしたら、私の番号はなかった。「これで、弁護士になれる」。ほっとし、うれしさが湧いてきた。

 私は4月21日に東京弁護士会に登録し、同日から虎ノ門総合法律事務所で働いている。これからは著作権やジャーナリズムに関する仕事をすることになると思う。

 ただ、修習では一般民事と呼ばれるお金や土地、相続などに関する事件や、離婚や別れた子との面会交流といった家事事件、刑事弁護など幅広く修習した。一つひとつの事件にその人の人生がかかっていると思うことが多かった。

 幸い、就職した事務所は著作権以外にも多彩な事件を扱っているので、私もいろいろ取り組みたい──。就職前、こう考えていたら、勤務初日、早速、家事事件の担当になった。「姉弁」である先輩弁護士の指導を受けながら依頼者のために働いている。

 10年かかってたどりついた弁護士である。64歳から新しいキャリアを始める幸せを噛み締めながら、歩んでいきたい。

週刊朝日  2022年5月27日号

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