司法修習の終了証書と弁護士バッジ(撮影・高橋奈緒〈写真映像部〉)
司法修習の終了証書と弁護士バッジ(撮影・高橋奈緒〈写真映像部〉)

 しかし、就職先が見つからなければ始まらない。63歳での就活である。受験で世話になった恩師は「(60歳を超えた人間を)喜んで採用してくれるところはないかも」と教えてくれた。高名な弁護士からは、「自分(一人)で事務所を開設する他ない」と率直に指摘された。

 年齢を変えることはできない。修習が終わってすぐに一人で事務所を開設することを「即独」というが、そんな自信も全くなかった。何とかして見つけなければと、司法修習に入る前の昨年2月から就職活動を始めた。

 しかし、春が過ぎ、夏になっても就活は終わらなかった。朝日新聞で53歳から8年間弱経験した著作権の仕事を生かそうと、日本弁護士連合会の求人情報サイトなどを手がかりに知的財産権を扱う都内の弁護士事務所、約30カ所に応募したが、ほとんど相手にされなかった。

「残念ながら、ご期待に沿えません。ご活躍をお祈り申し上げます」といった返事をくれる事務所さえ多くはなく、無視され続けた。

 応募先を探す中で、20代を大量に採用する大手弁護士事務所にエントリーしてみようかと思った。ホームページ(HP)を開き、生年の欄にチェックを入れようとしたら、私の生年の「1957」はなかった。端から相手にされていないと感じた。テレビで宣伝している弁護士事務所など相手にしてくれるところもわずかにあったが、著作権の仕事ができそうになかったり、面接で落とされたりした。

 約20年前に始まった司法制度改革で、多彩なバックグラウンドを有する人材を多数法曹に受け入れることがうたわれた。しかし、バックグラウンドがあっても年を取っていたらお呼びでないのかと思った。

 そんな苦戦の最中、著作権を主要な業務の一つとしている「虎ノ門総合法律事務所」のHPを見つけた。

■「覚悟」を求める事務所にトライ

 弁護士の仕事は「きつい」「厳しい」「きりがない」という意味で「『3Kである』と断言します。この覚悟のない者には、そもそも我が事務所の門を叩く資格がありません」と書いてあった。事務所の雰囲気の良さや、遅くまで仕事をすることはないというような優しく甘いメッセージのHPが目につく中で、異彩だった。

 ただ、先輩の弁護士や同期の修習生に聞くと、弁護士の仕事は忙しい。夜遅くまで仕事をするのは当たり前で、週末も仕事をする人が多い。3Kと断言するのはむしろ、正直だ。だいたい、楽ちんな仕事で成長できたり、喜びを味わったりすることはできないだろう。

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