大切な人や自分が大きな病にかかったとき、限られた時間で膨大な情報の中から、適切な治療法やいい病院を見つけ出すのは大変なことです。だからこそ、もしもに備えて知っておきたいことがたくさんあります。週刊朝日MOOK「手術数でわかる いい病院」の創刊20年を記念して4月24日に開催したオンラインセミナーでは著名な4人の医師が登壇。第1部では「名医対談“トップ病院”の取り組みと最新治療」と題して順天堂大学順天堂医院 心臓血管外科特任教授の天野篤医師と国立がん研究センター中央病院呼吸器外科長の渡辺俊一医師が対談しました。前編に続いて、その内容をお届けします。(以下、敬称略)

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「いい病院」ムック創刊20年記念セミナーの第1部を要約してお届けします
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■「いい病院」のデータはかなり正確に調べられている

渡辺:手術数と治療成績の関係について、天野先生はどう思われますか?

天野:それは間違いなく相関していると思います。特に突出した一人の外科医の執刀経験が多いことは、ポイントだと思います。

 病院によっては同学年の医師が横並びで手術の経験数を増やしているところもありますが、これは特殊な医療になったときには弱点をさらけ出します。ある程度、一人の診療経験が抜きんでている医師がいて、その下でチームができ、管理体制ができ、ボトムアップの姿勢でやっていくという状況が大事なのではないかと思います。

渡辺:心臓病、肺がんなど胸部の領域では、手術数の多い病院のほうが術後の合併症が低く、生存率が高い、ということはほぼ明らかです。大きな理由の一つは外科医の質が上がることです。当科の場合、一般的な病院の10倍くらいの手術を年間でやりますので、普通だと10年に1回しか経験しないような合併症を毎年、経験することになります。こうしていろいろな経験を積むことで研修医あるいは看護師もレベルが上がり、早く異変に気付くことができる、という具合にチーム全体のレベルが上がっていきます。

 天野先生が「手術数でわかるいい病院2022」の記事の中で言われていた、「いい医師のいるところには、いいチームがある可能性が高い」は、まさしくその通りだと思います。

 天野先生はこのムックに記載されている手術数の調査、いわゆるランキングについてはどのように受け止められていますか?

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トップ医師らはランキングをどう受け止めているか