2021年9月、デジタル庁発足式であいさつする石倉洋子デジタル監(当時)
2021年9月、デジタル庁発足式であいさつする石倉洋子デジタル監(当時)

 厚労省は、マイナ保険証対応の病院が儲かるようにと、マイナ保険証利用時の診療報酬を増やす制度を要求した。これに対し、デジタル庁はそれが大問題だとわかっていたが、結局、牧島大臣が押し切られたのだ。マイナ保険証利用で国民は損をする。普及に水を差すのは確実だ。

 デジタル庁がもたつくのを見て、萩生田光一経産相は、「デジタル庁がもっと大きな絵を描いてくれるのかなという気もあったが」と嫌味を言い、本来はデジタル庁がやるべき社会インフラのデジタル化の工程表作りを経産省で行うと宣言した。経産省がデジタル庁の利権を大臣と山分けする動きである。

 これでは、石倉氏が辞めたくなるのは当然だが、実は、こうなるのは最初から分かっていた。職員の大半が各省庁から出向した官僚で、彼らは親元の利権を守る。民間出身者は官僚たちを説得するだけでほとんどのエネルギーを消耗し、結局は何もできない。民間人を9割とし、残り1割の官僚は官邸が1本釣りで集め、民間人の意見を通すべく出身省庁を説得するという体制にすべきだが、岸田政権にはやる気も能力もない。2度目のデジタル敗戦はほぼ決まりと言って良いだろう。

週刊朝日  2021年6月3日号より

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