■欧米では一大ジャンル

 欧米のお笑いでは、いじりが一大ジャンル。著名人はいじられることで視聴者に認められていく。だが、その流れが変わりつつあることも確かだという。

「コンプライアンスの問題で、世界中でいじりが厳しくなっています」(マレーンさん)

 お笑いの世界ではないが、英国では5月、職場で男性の薄毛を侮辱したのはセクハラに当たると認めた雇用審判所の判断が出て話題になった。

 自ら髪の毛を抜く「抜毛症」に30年以上悩んできた土屋光子さん(42)は6年前、ウィッグ(かつら)の使用を夫にカミングアウトした。

「『もうウィッグを使いたくないから(残っている)髪をそりたいんだ』と。そのとき、夫が『君は結婚しているけど、尼さんになるんだね』と返しました。驚きでも否定でもなく、ユーモアで返してくれました。(深刻さが)中和されました」

 土屋さんは、髪に症状を持つ当事者のコミュニティー「ASPJ(Alopecia Style Project Japan)」の代表理事でもある。今回の騒動についてこう思う。

「ジェイダさんは公表して年数を重ねていて、脱毛への認識は発症した頃とは変わっていたでしょう。でも、スミスさんは悲しむジェイダさんという過去の記憶で止まっていたから、怒ったのかもしれません。スミスさんには『私の妻はすてきだろう』とジェイダさんの頭にキスをするくらいのユーモアで返してもらえたら周囲の捉え方も違ったのではないかと思います」

(編集部・井上有紀子)

AERA 2022年6月13日号

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