
いまでは彼女が発言したあと「いまのどうやった?」って部下に振ると「良かったと思う」と上から返される、みたいな立場逆転のじゃれあいができるまでに。片づけのように目標を意識したら、職場の絡まった問題も見え、改善に協力する人も現れた。全体でマンネリを打開していく空気ができたとか。
行動を変えたら、周りの反応が変わって不思議。勇気を出し、やり方を変えられたのには訳がありました。
「コロナの第6波が本当にキツくて。病院の機能が滞り私がパニックになって、プロジェクトの皆の前で泣きました。片づけどころじゃないと。でも彩智さんは『いまに集中しなさい』と檄を飛ばしてくれましたよね(笑)。私の生き方と重ねてハッとしました。介護や仕事の苦労に意識が向いて他もマイナスにとらえがちだった。自分で切り開いてほしくて言いにくいことを伝えてくれたんだなと」

人生に波は必ずあるし、しんどいことが理想のタイミングでくるとは限らず、ピンチは何回もくるはず。でもいちいち動揺してじゃだめなんだ。「いま、できることをやろう」と彼女はとらえてくれました。
「先の見えないことも自分次第で変わるんだなと、自立とか人生を切り開くことについて考えた45日でした。親との関係の中で、自分の問題、可能性を知れたのも意味があったんだといまは思えます。うちは田舎なので近所のおじちゃんたちが、昼間留守の間に父に会いに来て何かと世話を焼いてくれるんです。草刈りまでしてくれます。苦労ばかり見るのではなく、一人で介護できたのもこの環境のおかげだったと、受け取っているものに目が向いたり、いまも考え方が変わっています」
父のことは、弟を頼って必要なときに父との間に入ってもらうことで、程よい距離で暮らせています。入退院をくり返す状態を踏まえ、今後を考えていく覚悟もできた。最近はやっとパートナーのいる人生もいいなと思えるようになったとか。汚部屋と過去の意識の枠から脱出し、人生の意味づけをやり直し、人や社会とポジティブに関われるようになった。彼女のこれからがすごく楽しみです。
※AERAオンライン限定記事